Adobe Marketing Cloud(以下AMC) とは何なのか。
皆さんは全体像やその役割を理解されていますか?
Google Analyticsと並んで、多くの企業で利用されているアクセス解析ツールAdobe AnalyticsもAMCの8つあるソリューションのひとつです。
この記事ではAMC全体像やそれぞれの機能・役割を紹介します。
目次
Adobe Marketing Cloud(AMC)とは
AMCとは一言で言えば、「デジタルマーケティングにおいて企業の抱える課題を解消し、ユーザ1人ひとりに対して適切かつ理想的な情報を提供する」ことを目的としたサービスです。
ここでいう「情報」とは、広告やメルマガ、WebサイトやSNSなどから得られる「ユーザが求めている情報」を指しています。
近年ではスマートフォン・タブレットでどこでもインターネットに接続可能な状態が当たり前となり、多様なアプリを活用することで誰もが必要な情報を必要なタイミングで得られるようになりました。
それにともない、企業側は個々のユーザが欲しいと感じる情報(モノ)を必要な形で、適切なタイミングに届け続けることが急務となりました。
この膨大な作業のすべてを一企業が独力で実行していくことは難しいのが実情であり、大きな課題となっています。
そこで、上記のような、多岐にわたる企業の課題を解消し、理想的な情報提供を可能にするのがAMCの役割です。
AMC が持つ8つのソリューションとは、具体的には下記の8つです。(2016年8月現在)
①Adobe Campaign
②Adobe Media Manager
③Adobe Primetime
④Adobe Target
⑤Adobe Experience Manager
⑥Adobe Social
⑦Adobe Analytics
⑧Adobe Audience Manager
8つのソリューションは、それぞれ目的と用途が異なります。
そのため、それぞれの役割がどんなものか?ソリューションを組み合わせることで何が実現可能になるか?を把握することが重要となります。
Adobe Marketing Cloud(AMC)の役割「ユーザの誘導」「ユーザの情報表示」「ユーザのデータ収集と分析・分類」
AMCの8つのソリューションを、おおまかに役割分類すると、
- ユーザをWebサイトに「誘導」
- ユーザへの「情報表示」をコントロール
- ユーザ動向の「データ収集」を行い、収集したデータを元に「分析・分類」
という3つになります。
図1.各ソリューションのおおまかな役割
今現在、皆さんが抱えている課題はどんなものがあるでしょう。
「サイトのアクセス数は変わらないのに購入数が減っている。が、その原因がわからない」のでしょうか?または、「会員全員に同じメルマガしか送れていない」という方や、「ユーザに刺さるキャッチコピーがどれかわからない」と決定が出せない担当者もいるかもしれません。
そのほかにも、「Webサイトの規模が大きくなりすぎて、管理や制作が煩雑化している」ため、頭を抱えている人も多いのではないでしょうか?
AMCのソリューション1つひとつは、上記のようなピンポイントな課題を解消することを目的としており、個々の機能だけでも企業の課題解決を行うには十分な機能を有しています。
しかし、AMCはソリューションを複数組み合わせることにより、ソリューションの役割をより高めることが可能となります。
とはいえ、まずは、個々の役割を把握することが重要です。
下記では8つのソリューションを上の図1の左から順に解説します。
○「ユーザの誘導」に関するソリューション
①Adobe Campaign(メルマガ配信)
いわゆるMA(マーケティング・オートメーションツール)です。メールの自動配信設定などが行えます。
運用機能とともに、⑧のAdobe Audience Manager(データ分類)との連携でユーザの興味関心などに合わせた非常に細かい自動配信が設定可能になります。
例えば、訪れたユーザに対してどのタイミングでフォローメールを配信したらよいのか?ユーザ個別にサイト内で動いた遷移によってフォローメールの内容を変えるなど、ユーザに引き続き興味を持ってもらえるよう設定していき、サイトに再度訪れてアクションを起こしてもらうために活用できます。
②Adobe Media Manager(広告配信)
広告管理ツールです。自動入札管理 (オートビット)機能も有しており、広告配信に関する管理が行なえます。
全体の広告予算を把握して、どの広告に最適な予算をつければいいのかを、データから予測して配分していきます。しかも、機械学習により、使用すれば使用するだけ効率的に出稿できるようになります。
①のAdobe Campaign(メルマガ配信)と併せて、ユーザの「誘導」に関わる管理を担っています。
また、⑦のAdobe Analytics や⑧のAdobe Audience Manager との連携により、ユーザのサイト内行動やユーザの特徴を元に配信する広告のターゲット精度を高め、広告効果をより高めることが可能になります。
○「ユーザへの情報表示」に関するソリューション
③Adobe PrimeTime(動画配信プラットフォーム)
動画配信プラットフォームと呼ばれるものです。放送事業者や番組制作者をターゲットにしたソリューションであり、1つの動画を様々な動画配信サービスなどへ展開することが可能になります。
現在はPCやスマートフォンでWebサイトや動画配信サービスからテレビ放送と同じ動画を視聴することもできます。
その配信に関する作業を一元管理し、あらゆるデバイスに対してテレビ番組や映画を配信する機能を持っています。
④Adobe Target(ユーザに合ったコンテンツ表示)
Webサイトで表示するコンテンツの最適化を目的としているソリューションです。
A/Bテスト機能やレコメンド機能を併せ持ち、Webサイトに表示するコンテンツ(画像など)の最適化をサポートします。
A/Bテストは、2つ(もしくは3つ以上)のどちらのコンテンツのほうが効果的かを試す機能です。
レコメンド機能は、特定の条件を満たしたユーザにだけ通常とは異なるコンテンツ(画像やキャッチコピー)を表示する機能を指します。
このように、表示するコンテンツをより良いものにしていくための機能を持っているのがAdobe Targetです。
⑤Adobe Experience Manager(Webサイト構築管理)
サイト制作支援ツールと呼べるソリューションです。シンプルな操作でWebサイトを作成することが可能です。
かなり高機能で、通常は1ページごとにWebデザイナーに作成してもらう制作作業を、素材だけ用意することでマーケター自身が実施できます。
さらに、動的な処理や、画像のサイズ・色の変更なども可能です。
④Adobe Target(ユーザに合ったコンテンツ表示)で行うA/Bテスト用の素材を管理しておくことも可能です。
各種タグ管理も含めた、Webサイトのコンテンツ管理のすべてをこの一つで実行可能となるため、Webサイトが大きくなればなるほど生じるフォーマットの不統一やコンテンツ管理の煩雑化を解消し、制作に関する負荷を軽減することができます。
⑥Adobe Social(SNS管理その他)
SNSアカウントの一元管理とSNSの効果計測機能を併せ持つ、SNS専用サポートソリューションです。
TwitterやFacebookなど企業が所有するソーシャルアカウントを一元管理して、運用者の負荷を軽減することができます。
また、SNS内におけるオーディエンスの効果や拡散の効果を計測できます。
どの発言が有効的になるか、どのユーザが拡散すると効果的になるのかなど、SNSならではの角度から分析することができます。
Adobe Socialで集めた情報は⑦Adobe Analytics(データ収集・分析)へ集約することが可能です。
SNSでの動向がWebサイトでの動きにどれくらい変化をもたらしているかを詳細に分析することが可能になります。
○「データ収集と分析・分類」に関するソリューション
⑦Adobe Analytics(データ収集・分析)
アクセス解析ツールです。Webサイト上でのユーザの行動データを集めて分析し、Webサイトのどこに問題点(ボトルネック)があるかを発見して、改善に繋げることが主な目的のツールです。
ほかのAMCのソリューションで得られるアクセス情報をここにひとまとめにすることが可能です。
他社ツールでは、Google アナリティクスが有名です。
⑧Adobe Audience Manager(データ分類)
DMP(データマネジメントプラットフォーム)と呼ばれる、ユーザの情報をまとめあげて管理・分類するソリューションです。
⑦Adobe Analytics(データ収集・分析)と同じく、ユーザのデータを集めるという点では変わりません。
こちらは問題点の洗い出しではなく、ユーザの動向からどのような特長があるかを判別し、近しい行動をするユーザを ユーザ属性 という形でグループ化する機能があります。
例えば、「性別属性」「ファミリー属性」「旅行に興味あり」など。
ユーザを判別し、ユーザに対して最適な情報提供を「誘導」「情報表示」を担当するソリューションの機能を最大限活用するための根幹を担っているソリューションと言えます。
これら8つのソリューションには上記のような働きがあります。
1つだけでも、企業を課題解決に導いてくれますが、ソリューション同士を複数組み合わせることでさらなる相乗効果が生まれます。
下の図は、その基本的なソリューション連携の流れとなります。
図2.ソリューションの連携の基本構造
図2は、データ収集の機能を有する⑦Adobe Analytics(データ収集・分析)と⑧Adobe Audience Manager(データ分類)が軸となり、AMCのすべてのデータをこの2つに集約して分析と分類を行い、分析結果やユーザ分類情報を各ソリューションに提供することで、ユーザが期待するより効果的な「誘導」と「情報表示」を行うという構造です。
具体的な例を挙げると、
- A/Bテストの結果を⑦Adobe Analytics(データ収集・分析)に集約し、Webサイト上の行動と併せて効果と問題点を検証した上で、再度A/Bテストを実施
- ユーザ属性を利用して最適な広告やメルマガを適切なタイミングで配信し、その結果をさらにユーザ属性に反映させてブラッシュアップしていく
など、組み合わせ方しだいでは課題解決を超えた成果を上げることが可能です。
AMCは、個々の機能で課題解決を行いながら「目的を持ったユーザに、目的に沿った情報を様々な場面で提供し続ける」という企業にとって重要なミッションを達成することができます。
まとめ Adobe Marketing Cloudには、Webに関わる人々の「欲しい」がすべて揃っている
大きく3つの役割に分かれた、8つのソリューションを持つAdobe Marketing Cloud。これには、現時点でWebに携わる方々が常々「欲しい」と考えている機能のほとんどが備わっています。
組み合わせてWeb上の情報すべてを一元管理し、ユーザに対する情報提供をより良いものにすることで、企業の目標達成を手助けしていく……つまり、「カスタマーエクスペリエンス」を最適化していくことこそがAMCが目指すものです。
単体でも個々の課題を解決するに足る8つのソリューションですが、その真価は8つのソリューションを組み合わせて利用し、連携させることで発揮されます。
日々進化し、時に新しいソリューションを生み出して対応していくAMCがあれば、今後どのような変化にも対応し、企業が追求するべき「ユーザが心から期待するコンテンツや体験の提供」を高いレベルで実行し続けることが可能となるでしょう。