Google広告のコンバージョン計測には、「Cookie(クッキー)」が利用されていますが、Cookie規制の強化によって「Cookieを利用できない」、「コンバージョンデータに欠損が生じている」というケースが増えています。
そこで注目されているのが、Cookieを使用せずにコンバージョンの計測ができる、拡張コンバージョンです。
本記事では、拡張コンバージョンの基本的な仕組みや設定方法、活用するメリットや注意点などを詳しく解説します。
目次
Google広告の拡張コンバージョンとは
Google広告の拡張コンバージョンとは、簡単に言うと、自社のWebサイトで取得したユーザ情報を利用して、コンバージョン計測の精度を高める機能です。
通常のコンバージョン計測だけでは、Cookie規制の強化などによって正しく計測できないことがあり、実際にはコンバージョンが発生していても計測できていない「コンバージョンの欠損」が発生するリスクがあります。
拡張コンバージョンを導入することで、Cookieでは計測できないケースでもコンバージョン計測が可能となり、広告の効果測定の精度を高めることが可能です。
次に、拡張コンバージョンが必要とされるようになった背景とその仕組み、Cookieを利用するコンバージョンとの違いを詳しく解説します。
拡張コンバージョンが必要とされる背景
Google広告を含め、広告のコンバージョン測定では従来、「Cookie」と呼ばれる仕組みが利用されてきました。
Cookieとは、ユーザがWebサイトを訪問した際にブラウザに保存される小さなデータファイルで、ユーザを識別するための情報が記録されています。
Cookieがあることで、Webサイトにアクセスしたユーザのサイト内での行動データを保存でき、広告のコンバージョン計測や、ECサイトのカートに追加した商品データの保存が可能となります。
Cookieは、Cookieの発行元によって大きく次の2種類に分けられます。
ファーストパーティCookie | ユーザが訪問しているWebサイトと同じドメインから発行されるCookie |
サードパーティCookie | ユーザが訪問しているWebサイト以外(広告プラットフォームなどの第3者)から発行されるCookie |
特に、サードパーティCookieでは、複数のサイトを横断してユーザの行動データを取得できるため、ユーザごとにパーソナライズされた広告配信を行うため重要な役割を担っています。
広告配信においてはとても便利なCookieですが、ユーザからは常に行動を監視されているような不快感や、プライバシーに対する不安の声も多くあり、近年Cookieの利用規制の流れが起きています。
特に、サードパーティCookieの利用を制限するブラウザが増えていて、従来のCookieを利用したコンバージョン計測方法では、コンバージョンデータの欠損が発生してしまう媒体も多いです。
今後も規制の動きが強まると予想される中、Cookieに頼らずともコンバージョン計測ができる「拡張コンバージョン」が誕生しました。
拡張コンバージョンの仕組み
拡張コンバージョンでは、ユーザが自社のWebサイトでの購入・問い合わせなどの際に入力したメールアドレス・電話番号・氏名・住所などの「ファーストパーティデータ」を活用します。
これらのデータには個人情報が含まれているため、Google広告にそのまま送信されるのではなく、不規則な文字列に変換する「ハッシュ化」と呼ばれる処理が施された状態で送信されます。
Google広告では、そのデータをユーザのGoogleアカウントのログイン情報と照合し、広告クリックとコンバージョンを紐づけます。
ただし、拡張コンバージョンで計測できるのは、購入・問い合わせなどユーザのメールアドレス・電話番号・氏名・住所などの情報を取得できるコンバージョンに限られます。
例えば、「ボタンのクリック」だけをコンバージョンとして計測したい場合など、ユーザに情報の入力を求めないコンバージョンは利用できません。
また、Googleアカウントでログインしているユーザの情報を利用するため、Googleアカウントを持っていないユーザなど、ユーザのログイン状況によっては計測できないことがあります。
そのため、拡張コンバージョンはあくまでも通常のコンバージョン測定を「補うもの」であり、通常のコンバージョン計測と併用する形で使用されます。
通常のコンバージョンとの違い
Google広告の通常のコンバージョン計測では、Webサイトなどコンバージョン計測の対象に埋め込まれた「コンバージョンタグ」を利用します。
広告をクリックしたユーザがWebサイトにアクセスし、購入・問い合わせなどのコンバージョンアクションを実行すると、コンバージョンタグが作動してデータを計測する仕組みです。
コンバージョンタグの動作にはサードパーティCookieが利用されているため、規制によってCookieが利用できない場合、機能しなくなってしまいます。
一方、拡張コンバージョンはサードパーティCookieを使用せず、ユーザが入力した情報や、Googleアカウントの情報といったファーストパーティの情報を使って計測を行うため、規制などによってCookieが利用できない場合でもコンバージョンの計測が可能です。
拡張コンバージョンの設定方法
では実際に、拡張コンバージョンを利用するにはどのような設定が必要なのでしょうか。
拡張コンバージョンを設定する方法は、大きく分けて次の3種類があります。
・Google タグを直接設置する
・Google タグ マネージャーを使用する
・Google Ads APIを使用する
設定方法が簡単でおすすめなのは、2つ目の「Google タグ マネージャー」を使う方法です。
3つすべての方法に共通する事前準備と、それぞれの詳しい設定方法を解説します。
【共通】事前に必要な設定
まずは事前準備として、Google広告の設定で「拡張コンバージョンをオンにする」を有効にする必要があります。
Google広告の管理画面のメニューの「目標 > コンバージョン > 設定」で、「拡張コンバージョン」を選択し、「拡張コンバージョンをオンにします」をクリックしてチェックを入れましょう。
規約が表示される場合は、内容を確認して「同意する」をクリックします。
次に、「ユーザー提供データの設定および管理方法を選択します」の項目が表示されるので、「1つ選んでください」をクリックして、次の3つから選択し、「保存」をクリックします。
・Google タグ
・Google タグ マネージャー
・Google Ads API
これで事前準備は完了です。
次に、選択した3つの方法ごとに必要な設定を行いましょう。
方法1:Googleタグを直接設置する
拡張コンバージョンの設定で「Googleタグ」を選んだ場合、コンバージョンを測定するWebサイトに、「Googleタグ」を直接設置する必要があります。
そのために、まずはコンバージョンとするアクションを管理画面で作成します。
※新規作成ではなく、すでに作成しているコンバージョンアクションを利用する場合、既存のコンバージョンを編集して拡張コンバージョンを有効にしましょう
管理画面のサイドメニューから「目標 > 概要」を選択し、「+コンバージョンアクションを作成」をクリックします。
「コンバージョンを測定する場所を選択してください」の画面が表示されるので、該当する場所を選択しましょう。
Webサイトのコンバージョンを測定する場合は、「ウェブサイトウェブサイトで発生したコンバージョン」を選択して、編集をクリックします。
「コンバージョンを測定するウェブサイトを選択してください」の画面が表示されるので、測定対象のWebサイトのドメインを入力し、「スキャン」をクリックします。
「ウェブサイトコンバージョンを測定するデータソースを選択します」の項目が表示されるので、Googleタグにチェックを入れて「完了」をクリックします。
「保存して次へ」をクリックします。
測定で重視する点の項目が表示されるので、任意のカテゴリを選択しましょう。
「コンバージョンアクションを追加する」をクリックして、先ほど設定したGoogleタグのデータソースを選択します。
「新しいコンバージョン アクションを作成」の画面が表示されるので、「コードを使って手動で設定する」にチェックを入れ、「コンバージョン設定」の右にあるプルダウンをクリックします。
次に表示される「コンバージョン アクションの詳細」画面で、コンバージョンの設定を入力します。各入力項目の内容は次のとおりです。
項目 | 説明 |
アクションの最適化 | 「購入」「カートに追加」など測定したいコンバージョンの種類を選択する。 |
コンバージョン名 | 分かりやすいように任意の文字列を入力する。 |
値 | コンバージョン値のルールを設定する。 |
カウント方法 | 同じユーザからのコンバージョンを「全件」カウントするか「初回のみ」カウントするかを選択する。 |
拡張コンバージョン | 「このコンバージョン アクションに拡張コンバージョンを使用します」にチェックを入れる |
入力が完了したら、下部の「完了」をクリックします。
「保存して次へ」をクリックします。
これでコンバージョンアクションの作成は完了です。次にGoogleタグの設置作業を行います。
次に表示される画面の「Googleタグの設定」で、「イベントスニペットを確認」をクリックしましょう。
次のようにイベントスニペットが表示されるので、コピーしてトラッキングするページに貼り付けます。
イベントスニペットを貼り付けるにはWebページのコードを操作する必要があり、専門知識が求められるため、Webサイトの技術担当者と相談しながら進めましょう。
参考:Google タグを使用して拡張コンバージョン(ウェブ向け)を設定する – Google 広告 ヘルプ
方法2:Googleタグマネージャー(GTM)で設定する
Googleタグマネージャーを利用する場合は、Webページのコードを操作する必要はありません。
Googleタグマネージャーとは、Webサイトのトラッキングなどに使用する「タグ」を簡単に設置・管理できるサービスです。
Webサイトのコードを書き換えずにタグを設置でき、複数のタグを一元管理できるなどのメリットから、Google広告に限らずWebサイト・アプリ運営の幅広いシーンで活用されています。
Googleタグマネージャーで拡張コンバージョンを設定する前に、まずはGoogle広告の管理画面で、測定したいコンバージョンのIDを確認しましょう。
コンバージョンを作成していない場合は、「方法1」で解説した手順で、拡張コンバージョン用のコンバージョンアクションを新規作成しましょう。
コンバージョンのIDの確認方法は次のとおりです。
まず、Google広告管理画面のサイドメニューから「目標 > 概要」を選択し、拡張コンバージョンに使用するコンバージョン名をクリックします。
次に「タグを設定する」を選択し、「Googleタグマネージャーを使用する」をクリックしましょう。
次のように画面が切り替わるので、「コンバージョン ID」の下に記載されている数字と、「コンバージョンラベル」の下にある文字列を確認します。
コンバージョンIDを確認したら、Googleタグマネージャーにアクセスしてワークスペースを開きましょう。Googleタグマネージャーの利用が初めての場合、アカウント作成が必要ですが、その手順は省略します。
左のメニューから「タグ」を選択し、右上の「新規」をクリックします。
「タグの設定」をクリックしましょう。
タグタイプで、「Google広告」を選択します。
「Google広告のコンバージョントラッキング」をクリックしましょう。
タグの設定画面が表示されるので、「コンバージョンID」と「コンバージョンラベル」に、先ほどGoogle広告の管理画面で確認したIDとラベルを入力します。
正常に入力できると、右側に「このコンテナで Google タグが見つかりました」と表示されるので、「設定を表示」をクリックしましょう。
Googleタグの設定画面が表示されるので、「ユーザー提供データ機能を許可する」をクリックします。
次の画面で「ユーザー提供データ機能を許可する」にチェックが入っているか確認しましょう。「ユーザー提供データを自動検出する」で、必要な項目にチェックが入っているかどうかも確認します。
問題なければ左上の「×」をクリックして戻りましょう。変更を加えた場合は右上の「保存」をクリックします。
左上にタグの名前(任意の文字列)を入力してから「保存」をクリックしましょう。これでタグの設定は完了です。
次にトリガーの設定に移りましょう。「トリガーを追加」をクリックします。
すでに作成されたトリガーの一覧が表示されるので、そこから選択して設定することもできますが、新規でトリガーを作成する場合は右上の「+」をクリックしましょう。
次に「トリガーの設定」をクリックします。
「トリガーのタイプを選択」の一覧が表示されるので、計測したいコンバージョンの条件に合ったトリガータイプを選択しましょう。
例えば、お問い合わせフォームへの入力をコンバージョンとして計測したい場合は「フォームの送信」を選択します。
次にトリガーの詳しい条件を設定します。Webサイト上にあるすべてのフォームの入力を計測したい場合は「すべてのフォーム」を選択しましょう。
「一部のフォーム」を選択して、フォームのURLなどを指定し、一部の入力フォームからの送信だけをコンバージョンとすることも可能です。
設定が完了したら左上にトリガーの名前(任意の文字列)を入力して、保存をクリックします。
これで入力は完了です。内容を確認して「保存」をクリックしましょう。
Googleタグマネージャー(GTM)による拡張コンバージョンの設定方法は以上です。
今回は、「ユーザー提供データを自動検出する方法」による拡張コンバージョンの設定方法を紹介しましたが、ほかにも「ウェブサイトにコード スニペットを追加する」「CSS セレクタまたは JavaScript 変数を指定する方法」の2つの方法があります。
詳しくは公式ヘルプをご参考下さい。
参考:Google タグ マネージャーを使って拡張コンバージョン(ウェブ向け)を設定する – Google 広告 ヘルプ
方法3:Google Ads APIを使用する
Google Ads APIを利用して拡張コンバージョンを設定することも可能です。
Google Ads APIとは、外部のアプリケーションからGoogle広告アカウントの操作・変更をができる機能です。
Google Ads APIで拡張コンバージョンを設定する場合、ほかの方法とは異なり、ユーザがコンバージョンとなるアクションを実行した後でも、最大24時間後まで顧客データとの照合が可能です。
そのため、例えば自社のシステムに保存された既存の顧客データと照合して、過去24時間以内にコンバージョンしたユーザがいないか見つける、といったこともできます。
Google Ads APIで拡張コンバージョンを設定するにはプログラミングなどの高度な技術スキルが必要で、設定方法は使用するサーバーなどによっても異なります。
詳しくは、次のGoogle広告の公式ヘルプをご参考下さい。
参考:Google Ads API の拡張コンバージョン(ウェブ向け)について – Google 広告 ヘルプ
拡張コンバージョンを導入するメリット
Google広告は、拡張コンバージョンの設定をしなくても運用できますが、拡張コンバージョンを導入することで次のようなメリットがあります。
- サードパーティCookieの規制強化に備えられる
- コンバージョンの計測精度が向上する
- ファーストパーティデータを利用できる
- Google広告の機械学習の精度を向上できる
それぞれ詳しく解説します。
サードパーティCookieの規制強化に備えられる
Google広告の通常のコンバージョン計測にはサードパーティCookieが使用されているため、Cookie規制の影響でコンバージョンデータを正しく取得できなくなってきています。
拡張コンバージョンは、ユーザが入力したメールアドレス・電話番号などのファーストパーティデータを使用して計測するため、Cookie規制の影響を受けにくいです。
近年、各国でプライバシー保護に関する法整備が行われ、ブラウザ運営各社によるクッキー規制が次々と強化される中、今後もその流れは続く見込みです。
拡張コンバージョンを導入していれば、万が一Cookieの利用が一切できなくなった際にも、コンバージョン計測環境を全く維持できなくなる、ということは防げるでしょう。
コンバージョンの計測精度が向上する
通常のコンバージョン計測は、サードパーティCookieの規制がない場合でも、100%機能するとは限りません。
エラーなどによってサードパーティCookieがうまく機能しなかった際は、正しくデータを計測できない可能性があります。
拡張コンバージョンを導入することで、通常のコンバージョン計測データを補い、計測漏れを減らすことができます。
ファーストパーティデータを利用できる
広告プラットフォーム側は、Cookieに代わるものとして主にファーストパーティデータを使った施策を次々とリリースしています。
個人情報の第三者提供の同意取得に対応ができていれば、コンバージョン計測以外にも、ターゲティングにファーストパーティデータを利用するなど、広告運用効果を上げる様々な機能が利用可能になります。
拡張コンバージョンの導入は、媒体が推奨する広告運用ができる環境を整えることにもつながります。
Google広告の機械学習の精度を向上できる
コンバージョンの計測精度を向上することは、機械学習の精度を高めることにもつながります。
Google広告の機械学習は基本的に、コンバージョンの正確な計測データを多く供給するほど、精度が高まる仕組みです。
拡張コンバージョンによってコンバージョンの計測精度が向上することで、Google広告のアルゴリズムがより多くの正確なデータを基に学習でき、入札調整やターゲティング精度の向上につながります。
拡張コンバージョンを導入する際の注意点
拡張コンバージョンは多くのメリットがある機能ですが、次の2点に注意して利用する必要があります。
- 顧客データを取得する必要がある
- 個人情報保護法への対応が必要
それぞれ詳しく解説します。
顧客データを取得する必要がある
拡張コンバージョンを利用するには、コンバージョンを計測するWebサイトやアプリに、申し込みフォームなどのユーザの顧客データを取得する仕組みを用意する必要があります。
そのため、顧客データを取得する手段がないコンバージョンの計測には利用できません。
例えば、「LINEの友だち追加のリンクをクリック」といった、特定のボタンのクリックだけをコンバージョンとして計測する場合には、ファーストパーティーデータの取得ができないため、拡張コンバージョンを利用できません。
拡張コンバージョンが利用できるのは基本的に「購入」「申し込み」といった、ユーザ情報の入力作業が伴うコンバージョンの計測に限られるという点は把握しておきましょう。
個人情報保護法への対応が必要
拡張コンバージョンでは個人情報を扱うため、「個人情報保護法」など関連する法律の内容を十分に把握して、コンプライアンス体制を整備する必要があります。
具体的には入力データの用途について、プライバシーポリシーに適切な記載を行ったり、ユーザの同意を得たりなどの対応が必要です。
適切に対応するには法律についての専門的な知識が求められるため、法務部門などの専門家と連携しながら進めていきましょう。
また、サイト上に「個人情報の第三者提供に対する同意」を取得する環境ができていない場合、拡張コンバージョンの設定自体の費用だけでなく、サイト改修の費用や工数がかかる場合があります。
まとめ
拡張コンバージョンは、Cookie規制が進む中でも広告効果を正確に把握できる有効な手段です。
ファーストパーティデータを活用することで計測漏れを防ぎ、Google広告の機械学習精度の向上にも寄与します。
拡張コンバージョンを利用するには、顧客データを取得できる環境の整備や、個人情報保護法をはじめとした法的対応が欠かせません。そのため、導入にあたっては技術的な設定だけでなく、プライバシーポリシーの明確化やコンプライアンス体制の強化も求められます。
拡張コンバージョンの導入・設定など、Google広告の運用についてのサポートをご希望の際にはメディックスにご相談下さい。
メディックスは正規代理店「Google Partner」として、Google広告の導入・運用サポートの豊富な実績がございます。まずはお気軽にお問い合わせ下さい。