【セミナーレポート】データ活用の成否は「活用前の整備」で決まる|統合・辞書定義・BI/AI環境の3ステップを解説|ウェブ部

【セミナーレポート】データ活用の成否は「活用前の整備」で決まる|統合・辞書定義・BI/AI環境の3ステップを解説

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本記事は、2026年6月24日に開催したセミナー「『意思決定を加速するデータ戦略とは?』プロが教える分析環境の作り方」の内容を記事にまとめたものです。


 

生成AIやBIツールの普及により、「データを活用して意思決定を加速したい」と考える企業が増えています。BigQueryなどのデータ基盤も身近になり、「ツールを導入すればデータ活用が進む」という期待が広がっています。

ところが、いざデータ活用を進めようとすると、現場では次のようなお悩みをよく耳にします。

  • ツールごとにデータが散らばり、集計はExcelで手作業になっている
  • 部署ごとに「売上」や「CV」の定義が違い、数字の信頼性を問われる
  • BIやAIを入れたいが、何から手をつければいいか分からない

なぜ、データは社内に溢れているのに活用が進まないのでしょうか。本セミナーでは、その根本原因がデータ活用前の「整備」の欠如にあることを示し、統合辞書定義BI・AI環境構築という3つの正しいステップを解説しました。本記事ではその内容をレポートします。

 

本記事で分かること
・バラバラなデータを統合するための正しい手順
・AIやBIの精度を高める「辞書定義」の進め方
・現場が迷わず意思決定できるBI・AI環境の設計指針

 

登壇者紹介

鈴木 清蔵

株式会社メディックス マーケティングデザインユニット シニアテクニカルコンサルタント 鈴木 清蔵

2008年からメディックスにて、Adobe AnalyticsやGoogle アナリティクスの黎明期より、サイトにおけるKPI設計・実装・分析までを一貫して支援し、数多くの企業のマーケティング課題解決に貢献してきた。現在はその知見をGoogle Cloud領域へと広げ、データを統合するシステム基盤の構築から高度な分析、AI活用に至るまで、テクノロジーを起点としたデータドリブンな意思決定支援に取り組んでいる。

なぜ、データ活用は進まないのか

広告データ、アクセス解析、顧客管理、セールス記録など、データは社内に溢れています。それにもかかわらず、多くの企業ではデータがバラバラに点在したままで、「活用しなければ」と思いながらも具体的にどう動くべきかが見えていません。

セミナーではまず、データ活用を阻む「3つの壁」が示されました。

 

 

1つ目が「点在」です。データが媒体やツールごとに散らばって横断的に見られず、集計に膨大な時間がかかります。

2つ目が「定義の不一致」です。「売上」「CV」の定義が部署ごとに違い、ツールごとに計測方式も異なるため、同じ言葉なのに数字が合わず信用されません。

3つ目が「属人化」です。集計や加工に手一杯で肝心の分析や施策立案まで至らず、しかも集計作業は特定の人しか触れない状態になりがちです。

この状態のまま「とりあえずBI・AIを導入」から始めてしまうと、見栄えの良いダッシュボードが完成したものの誰も活用していない、AIに分析させても計算された数字が合わない、結局Excelでの手作業集計に逆戻りする、といった失敗につながります。ツール導入は最後の工程であり、その前の「整備」を飛ばしたことが失敗の原因です。

データ活用の成否は「活用前の整備」で決まる

では、整備とは何をすることなのでしょうか。セミナーでは、ツール導入を進める前に重要となる3つのステップが示されました。

 

 

STEP1が「統合」です。バラバラなデータを、共通のIDと粒度で1箇所(DWH)に集約します。

STEP2が「辞書定義」です。指標の意味や計算ロジックを揃え、AIやBIが誤解しない状態を作ります。

STEP3が「BI・AI活用」です。現場が迷わず意思決定できる環境を構築します。

この順番を守らずに整備をしないままでは、「AIもBIも嘘をつく」状態になってしまいます。以下、各ステップを詳しく見ていきます。

STEP1:統合 バラバラなデータを1つにまとめる

多くの現場では、媒体ごとにCSVをダウンロードしてコピペで結合するという、手作業のExcel突合が行われています。毎月数日がかりの集計作業になり、担当者が変わると再現できず、更新のたびに数字がずれるリスクを抱えています。

これを、パイプラインによるDWHへの自動集約に切り替えます。各データを自動で収集・統合することで、常に最新の状態に毎日自動更新され、誰が見ても同じ数字になる再現性が生まれ、空いた時間を分析や施策に使えるようになります。

 

 

進め方は4つのステップに整理されます。まずデータソースを棚卸ししてどこに何のデータがあるかを洗い出し、次に広告パラメータ・顧客ID・日付の粒度を揃える共通キーを設計します。その上でBigQueryなどの1つの基盤(DWH)に集約し、最後にパイプライン化して自動更新の運用に乗せます。

ここで注意したいのが、「とりあえず全部入れる」前に、何のために統合するか(見たいKPI)を先に決めることです。目的なき統合は、ただのデータの墓場になってしまうと指摘がありました。

STEP2:辞書定義 AI・BIが「正しく理解」するための意味付け

データを1箇所に集めただけでは、まだ活用できる状態ではありません。次に必要なのが「辞書定義」です。

なぜ辞書が要るのでしょうか。それは、AIがデータから読み取る定義と、自社のビジネス上の定義が違うからです。

例えば「売上」を集計する場合、AIはカラム名から「Revenueの合計」と解釈します。しかし、自社のビジネス定義が「Revenue × 1.1(税込で計算)」であれば、AIが返す数字は自社の考える売上とは一致しません。

 

 

セミナーでは、デモデータを使った実演も行われました。同じ「売上」の集計をAIに依頼しても、辞書を定義する前と後では返ってくる数字が変わり、辞書を定義して初めて自社の定義どおりの数字が返ってくることが、実際の画面で示されました。

定義を「自分たちに合った辞書」にしない限り、AIは勝手な解釈で集計してしまいます。この定義をせずにAI活用を進めてしまうと、AIは永遠に「嘘つき」のままになってしまいます。

進め方としては、まず売上・CV・アクティブUUなどの主要指標を棚卸しし、現場を巻き込んで部署間で意味を1つに揃える合意形成を行います。その上で計算ロジックや粒度を明文化して辞書に登録し、ビジネスステージの変化に応じた更新と管理の仕組みまで決めておきます。

この辞書は「セマンティックレイヤー」とも呼ばれます。辞書が揃っていないと、人間の自然言語からの問いかけに対して、AIでの集計や分析は誤った数字を平然と返してしまいます。データベースにデータを溜めるだけでは不十分であり、自分の頭の中で定義を知っているだけでも不十分です。だからこそ、システムとビジネスをつなぐ共通言語として定義(辞書)が必要になります。

STEP3:BI・AI環境 現場が迷わず使いこなせる状態へ

統合と辞書定義が整って、初めてBI・AI環境の構築に進めます。

まずBI環境については、KPIを詰め込みすぎて誰も活用しなくなるダッシュボードにしないために、3つの設計指針が示されました。

 

 

1つ目が「指標を絞る」ことです。1画面で表示する情報を厳選します。情報量が多いほど意思決定のスピードは低下するため、重要な指標に絞り込みます。

2つ目が「アクションに繋げる」ことです。現状の数値だけでなく、次に取り組むべき改善アクションの切り口が分かる粒度で明記します。

3つ目が「誰でも活用しやすいフォーマット」です。説明書や専門知識がなくても、誰でも活用できる状態をゴールにしたシンプルなフォーマットを意識します。

次にAI環境です。データの準備さえ整えば、分析はまずAIに任せることができます。

 

 

例えば、「先月の店舗別売上は?」と自然言語で聞くだけで、SQLを書かずにAIが正しく集計してくれます。数字の急変をAIが検知して「なぜ下がったか」の要因まで掘り下げる異常検知や、集計レポートの自動生成も可能になり、人は判断と打ち手に集中できるようになります。

ただし、自社にあったAIの賢さは、データの整備状況で決まります。統合と辞書定義を終えて初めて、AI分析環境は機能します。整備済みのデータがあって、初めてAIは戦力になるということです。

一方で、整備の重要性や進め方は分かっても、実際に自社で実行するのは想像以上に困難だという話もありました。統合では部署ごとに分かれたシステムを繋ぐための各担当との調整やアクセス権限、共通キー設計が必要になります。辞書定義では用語を揃えるための部門間の合意形成が最大の壁になり、社内の利害調整だけでは前に進みにくい場面があります。BI・AI環境も作って終わりではなく、現場が使い続ける運用・改善まで設計しないと宝の持ち腐れになってしまいます。だからこそ、伴走できるノウハウを持ったパートナーと進めることが最短ルートだと紹介されました。

導入で何が変わるか

整備によって何が変わるのかを、セミナーのまとめに沿って整理します。

 

Before(整備前) After(整備後)
データ ツールごとに点在し、Excelで手作業集計 DWHに自動集約され、常に最新・誰が見ても同じ数字
数字の信頼性 部署ごとに定義が違い、「その数字、本当?」と詰められる 辞書定義で全社の言葉が揃い、数字が信用される
意思決定 集計に時間を取られ、意思決定が遅い 現場が迷わず数字を見て、速く意思決定できる
働き方 特定の担当者に集計作業が属人化 集計はシステム(パイプライン)に任せ、人は判断と打ち手に集中

明日からできる最初の一歩

最後に、明日から始められる3つのアクションが紹介されました。

1つ目は、主要指標を1つ書き出すことです。「売上」の計算ロジックを、自分の言葉で定義してみます。

2つ目は、データの在りかを棚卸しすることです。どこに何のデータがあるか、一覧にしてみます。

3つ目は、「見たいKPI」を1つ決めることです。何のために整備するのか、目的を言語化します。
 

 

まずは現状の棚卸しから始めることが、データ活用の第一歩になります。なお、メディックスでは自社のデータ活用に不安をお持ちの企業向けに、現状の課題整理から今後の進め方までを相談できる個別のデータ活用相談会も実施しています。

質疑応答(抜粋)

Q. 広告データやCRMなど、媒体ごとにデータの更新頻度が異なります。統合する際、更新タイミングのズレはどのように考慮すればよいですか?

すべてのデータをリアルタイムに同期する必要はない、というのが結論です。例えば、月次の報告レポートに使うのであれば月別や日別の粒度で十分ですし、日々の広告運用に使うのであれば日別での統合が現実的です。

重要なのは、システムの都合に合わせるのではなく、見たいKPIと活用のスピードに合わせて更新頻度を切り分け、レポートごとに設計することだと説明しました。

Q. 一度社内で言葉の定義を揃えても、ビジネス状況の変化や新しい指標の追加で定義が変わっていきます。辞書のメンテナンスや運用はどのように進めればよいですか?

ルール化しても、ビジネスステージの変化によって定義が変わっていくことは前提と捉えます。ポイントは、辞書の管理を属人化させないことです。

具体的には、辞書の責任者(会議の進行役)を明確に決め、関係者が集まって定義を見直す場を定期的に設けます。会議を重ねるうちに進め方が社内に浸透していくため、誰が進行し、何を決め、どのように更新するかというプロセスまでルールにしておくと、形骸化を防げると回答しました。

Q. 広告やCRMのデータだけでなく、営業担当が手入力しているExcelの案件管理表のようなファイルも統合の対象にすべきですか?

現場の意思決定に使われている情報であれば、Excelであっても統合の対象にすべきです。最近はスプレッドシートで管理しているケースも多く、スプレッドシートであればBigQueryへの自動取り込みも比較的簡単に仕組み化できます。

どこまで統合するかはシステムの都合で決めるのではなく、「ビジネスで何を見たいのか」という自分たちの要望から決めることが大切だと締めくくりました。

まとめ

本セミナーでは、データ活用の成否は「活用前の整備」で決まるという考え方のもと、統合・辞書定義・BI・AI環境構築の3ステップを解説しました。

整備が済んだ環境では、働き方が具体的に変わります。毎月数日がかりだったExcelでの集計作業はパイプラインが自動で行い、知りたい数字は「先月の店舗別売上は?」とAIに聞くだけで手に入ります。会議では「その数字、本当?」と根拠を詰められることがなくなり、担当者は集計ではなく、判断と打ち手の検討に時間を使えるようになります。

攻めのデータ活用は、地道な整備の先にあります。まずは「売上」など主要指標1つの定義を自分の言葉で書き出すところから、整備の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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