ECの新規獲得を最大化する広告設計|予算維持でCPOを44%改善した食品ECの事例|ウェブ部

ECの新規獲得を最大化する広告設計|予算維持でCPOを44%改善した食品ECの事例

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當流谷 圭

EC新規獲得_アイキャッチ

ECサイトの成長に不可欠な新規顧客の獲得ですが、課題に感じている担当者も多いのではないでしょうか。

そんなとき、「新規メディアを試せば改善できるのでは?」という考えになりがちです。

しかし、現在運用中の主力メディア(GoogleやYahoo!)を正しく設計し直すだけで、劇的な効果改善ができる可能性があります。

本記事では、弊社で実際に運用している食品系ECサイトを運営するA社の事例をもとに、EC案件における新規獲得の考え方と、具体的な運用手法を解説します。

2025年10〜12月の繁忙期において、広告予算を維持しながら新規獲得件数昨対+74%・新規のCPO(顧客獲得単価)を約44%改善を実現した事例なので、ぜひ最後までお読みいただき、運用改善にご活用ください。

 

本記事で分かること
・新規/既存を正確に判定するための計測設計(アドエビス×基幹システム突合)
・予算・評価を「新規」「既存」で分離する考え方
・トレンド感度の高い層を引きつけるフック商品の選定方法
・サーチ・ディスプレイ各メディアでの新規/既存分離運用の具体例
・繁忙期に広告費を維持しながら売上+27%・新規CPO約44%改善を実現した方法

「新規獲得」強化の背景

まず今回の事例は、A社から「2025年はより新規獲得に主眼を置いた運用にしたい」とご要望をいただいたところから始まりました。

EC案件では「既存顧客への再購入促進」が安定した売上をもたらす一方で、顧客基盤が広がらなければ事業の成長には限界があります。

A社でも新規向け商品の開発に注力していたこともあり、商品戦略と広告戦略が連携することで今回の施策が実現しました。

 

なぜ主力メディアの見直しをしたのか

新規獲得を増やしたいとなった際、「TikTokなど新しいメディアを試す」という方向性が検討されがちです。

しかし、新しいメディアで実際に成果を出すためには、動画素材などメディアに最適なクリエイティブの制作や、配信最適化までに要する時間・コストといったハードルも存在します。

その分、期待した成果が得られなかった際にすぐ配信を停止せざるを得ない、といったリスクも伴います。

そのため今回は、現在運用中の主力メディアにおいて、運用設計を根本から見直すことで改善を図りました。

 

新規獲得拡大につながる5つのポイント

成果を出すためには、「新規顧客」という定義を明確にし、評価軸・商品・配信設計のすべてを新規顧客の目線で整備することが必要です。

そのために必要な5つのポイントを説明します。

① 新規/既存の正確な判定

新規獲得施策を設計する前に、まず「新規顧客」はどういったユーザを指すのか、CV単位で正確に定義し、計測環境を整えます。

 

データ連携元 基幹システム:注文IDごとに新規/既存の判定をデイリーで共有
計測ツール アドエビス(ADEBiS)を使用し、注文IDで広告施策データと突合
運用レポート 各施策ごとに新規/既存判定をデイリーで反映し、リアルタイムで評価

データの精度が低いと、どれだけ予算を投下しても「本当に新規を獲得できているか」の検証ができません。計測設計は施策の起点となる最重要ステップです。

※メディックスでは、こうした計測環境の構築フェーズから、伴走サポートが可能です。お気軽にお問い合わせください。

 

② 予算・評価を新規/既存で分離

新規・既存顧客に対して同じ予算・同じ評価基準で運用すると、どうしても効率の良い既存顧客への配信に予算が集中し、新規獲得が弱くなってしまいます。

そのため、次のように予算と評価軸を明確に分離しました。

 

新規獲得
予算の70%を投資
事業規模を拡大するための攻めの投資枠。評価基準は新規CPO。将来の売上基盤となるため、既存とは分けて運用する。
既存育成
予算の30%を投資
獲得済みの顧客を低コストで維持し、確実に利益を回収する枠。評価基準は媒体比率(MR)。ここで得た利益を新規獲得へ再投資する。

※媒体比率(MR)=広告費用÷売上額

「新規」への割合を70%に設定したことで、新規獲得に対して優先的に予算を投下できる構造を整えました。

 

③ フック商品の選定

新規顧客はブランドへのなじみがない状態で広告に接触するため、「とりあえず試してみたい」と感じさせる訴求力の高いフック商品の設定が重要です。

もともとはどの施策も同じ商品を訴求していましたが、2025年から新規向けと既存向けで訴求商品を分けて運用しました。

また、新規向け商品は1人1回限りの購入を想定し、商品ラインナップの中には原価率80%程度という非常に高還元な『超お得商品』を用意しました。

この商品単体では利益が出ませんが、将来のロイヤルユーザー獲得に向けた先行投資と位置付けています。

 

2024年(新旧共通) 既存・新規共通の定番商品ラインナップ
2025年 新規向け(新設) 産地やカテゴリー名が直感的にわかり、トレンド感度の高い層に響くエントリー商品に特化。かつ、高還元な価格設定。
2025年 既存向け リピーター向けの定番・プレミアム商品

産地やカテゴリーが直感的にわかる商品名はユーザのCTRアップにも貢献しており、クリエイティブの観点でも有効でした。

 

④ 各メディアで新規・既存を分けて運用

特定のメディアだけを新規専用にするのではなく、運用中のすべてのメディアにおいて新規・既存を分けた配信設計を行います。

 

サーチ広告(Yahoo! / Google)

同じキーワードでも、新規向けと既存向けで入札単価(キャンペーン)と遷移先(訴求商品)を分けます。

  • 既存向けキャンペーン
    TOPページへ遷移。既存顧客向けの定番商品を訴求
  • 新規向けキャンペーン
    新規向けフック商品のLPへ遷移。新規CPOで評価

 

ディスプレイ広告(YDA / Criteo)

ユーザのサイト訪問履歴・購入履歴によって、訴求商品と評価KPIを切り分けます。

 

通常のリターゲティング 既存顧客向け。購入実績のあるユーザに定番・リピート商品を訴求
訪問済み×未購入者RTG 新規向けとして分離。サイトに来たが買わなかった層にフック商品を訴求
類似配信など 潜在新規層へのリーチ拡大。顧客電話番号リストへの類似配信でも新規向け商品に特化

 

⑤ LTV(ライフタイムバリュー)の継続検証

新規獲得を大幅に伸ばした際に懸念されるのが、「CPOを下げるために質の低い顧客を獲得しているのではないか」という点です。

今回の施策において、LTVの詳細な数値追跡は割愛しますが、A社へのヒアリングにおいて「新規獲得を大きく伸ばしたが、LTVも良好に推移している」との回答をいただいています。

一過性のブームではなく、ブランドのファンになり得る層へ正しくアプローチできている手応えを感じています。

フック商品経由で獲得した新規顧客が継続的な顧客へと転換しているか、F2(2回目購入)転換率などを継続的に検証していく予定です。

 

施策の成果(2025年10〜12月 繁忙期)

広告予算を前年同等に維持しながら、次の成果を達成しました。

 

【全体】

売上

+27%

広告費は昨対100%を維持

新規獲得件数

+58%

全体集計ベース

新規率

向上

CTR改善・クリック増が牽引

【既存領域】

売上

+21%

媒体費は昨年同等を維持

Criteo

拡大

効率を守りながら拡大

YDA-RTG(既存)

CTR×1.6

クリエイティブ刷新が奏功

【新規獲得領域】

新規獲得件数

+74%

昨年対比

新規CPO

▲44%

KPI変更

媒体比率→新規CPO

評価軸の転換が効いた

広告費を増やすことなく、施策の設計を変えるだけでこれだけの改善が実現できたことは、運用設計の重要性を示す好事例です。

 

新規獲得領域:主要施策の結果

新規獲得領域における各施策の概要と結果は次のとおりです。
※金額は概算

 

施策 取り組み内容 結果
一般キーワード新規専用キャンペーン 既存向けキャンペーン(TOPページ遷移)に加え、新規向け商品LPへの新規専用キャンペーンを新設 媒体費は昨年の6割程度ながら、新規件数+37%・新規CPO 約39,000円→約16,000円に改善。新規率15%→24%
YDA-RTG新規 訪問済み×未購入者リタゲを既存RTGから切り分け、フック商品で新規CPO管理 新規件数RTG全体で昨対145%純増。新規RTG単独CPO 約13,000円と目標クリア
YDA類似配信 顧客電話番号リストの類似ユーザに新規向け商品を絞って配信(昨年失敗→今期再挑戦) 新規件数 40→123件(+208%)、新規CPO 約21,000円→約12,000円に大幅改善
Criteo GO(新規追加) 従来の未購入者RTGに加え、未訪問者も含むGOキャンペーンを追加 Criteo新規全体で件数+87%、新規CPO 約12,000円→約10,000円。件数増と効率改善を同時実現
Google PMAX ショッピング面(新規向け・カテゴリー別)とALL面に配信。新規向けキャンペーンは2024年11月より開始 昨年同等の媒体費で売上+18%。新規向け配信経由の売上を大幅アップ
Googleデマンドジェネレーション Discoverフィード面に絞った新規向け配信 初速は苦戦も12月の新規CPO 約11,000円まで改善。年明け再開後は振るわず、現在打ち手を検討中
Microsoft 動的RTG MicrosoftにおけるダイナミックフォーマットのRTG(新規向け追加) CPCがほか施策より高く、ボリュームも限定的。現在停止中。売上ファーストの時期に再検討

 

【本施策の振り返り】良かった点と今後の課題

良かった点

  • 各施策でCPCの改善
    自動入札に加え、新規向けクリエイティブの刷新によりCTRが向上。
    安価なCPCでクリックを増やし、売上アップと媒体比率改善を同時達成。
  • 新規・既存で打ち出す商品を明確にすみ分け
    フック商品を「新規向け商品」として明確に位置付け、新規率のアップに貢献。
  • 低単価チャネルへの戦略的アロケーション
    YDAやCriteoなど安価なディスプレイ施策を強化し、新規顧客獲得増加と効率改善を同時実現

今後の課題

  • 看板商品の在庫・供給依存リスク
    注力フック商品への依存が高く、欠品時に備えた「第2・第3のフック商品」を早期に特定する必要がある
  • 輸入商品のコスト増加への対策
    円安継続による原価高騰が想定されるため、A社と密に連携しどの商品を打ち出すか継続的に検討する
  • 新規顧客の「質」の検証(LTV)
    2025年に大幅に伸ばした新規顧客がF2購入やロイヤルカスタマーへ転換しているか、継続検証が必要

 

まとめ:新規獲得は新メディアより「設計の見直し」から

EC案件で新規獲得を増やしたいとき、「新しいメディアを試す」という発想は自然ですが、今回の事例が示すのは、現在運用中の主力メディアにおいても正しい設計と評価軸を持つことで大きな成果が生み出せるという事実です。

5つのポイントをおさらいします。

  1. 計測設計を整え、注文IDで新規・既存をCV単位で正確に判定する
  2. 予算と評価軸を「新規(新規CPO)」と「既存(媒体比率)」で分離する
  3. クライアントと連携してトレンド感度の高い層に響くフック商品を選定する
  4. サーチ・ディスプレイすべてのメディアで新規・既存を分けた配信設計を行う
  5. 新規顧客のLTVを継続検証し、獲得の「量」と「質」の両立を目指す

 

新規獲得に課題を感じている場合は、まず計測設計の見直しと評価軸の分離から始めることをお勧めします。

 

EC広告運用・新規獲得の設計にお悩みのみなさまへ

メディックスでは、EC案件における新規獲得から既存顧客育成まで、データに基づいたトータルサポートを提供しています。計測設計・予算設計・クリエイティブ戦略などについて、お気軽にご相談ください。

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アップデートが多く複雑化する中で、効果につなげるためには正しい戦略を取らなければいけません。

メディックスでは、お客様の事業を深く理解し、状況に応じて「攻め方」を変えた柔軟な運用が可能です。

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今の運用に少しでも課題を感じている方は、まずはお気軽にご相談ください。


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記事監修者

當流谷 圭

株式会社メディックス Digital advertising officer

2007年、株式会社メディックスに新卒で入社して以来、18年以上デジタルマーケティングの最前線で活躍。
広告運用領域を中心に大規模案件を担当し、運用改善だけではなく、LTVを加味した運用設計など、ROAS・ROI改善も得意とする。
現在は、Digital advertising officerとして運用型広告の研究や、AI活用推進組織を運営。
趣味は、生き物の飼育(爬虫類と蟻)。

略歴

2007
株式会社メディックスに新卒入社
2018
Google主催の「Premier Partner Event | Tokyo2018」で機会学習について講演(国内代理店で唯一)
その他、セミナー登壇多数

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