カスタマーマッチとは、Google広告で利用できるターゲティングの1つで、設定することで、自社の保有する顧客データを基にした高精度なターゲティングが可能です。
既存顧客へのリピート施策やアップセル、休眠顧客の呼び戻しや新規開拓にも応用できるため、幅広いマーケティング施策に役立ちます。
本記事では、カスタマーマッチの仕組みやメリット、設定方法、運用時の注意点などをわかりやすく解説します。
目次
カスタマーマッチとは?
近年のcookie規制の強化によって、従来のサードパーティデータに依存した広告配信は難しくなりつつあります。
そこで注目されているのが、自社で保有する顧客データ=ファーストパーティデータを活用する「カスタマーマッチ」です。
Google広告が提供するこの機能では、既存顧客のデータをもとに広告を配信できるため、より精度の高いターゲティングが可能になります。
はじめに、その仕組みと概要について、詳しく見ていきましょう。
カスタマーマッチの概要と仕組み
カスタマーマッチは、自社が保有している顧客データ(メールアドレスや電話番号など)をGoogleにアップロードすることで、そのデータを基にしたターゲティングが可能になる仕組みです。
アップロードされた顧客データはGoogleアカウント情報と照合され、一致したユーザに広告を配信できるほか、除外設定によって既存顧客への配信を避けることも可能です。
これにより、既存顧客へのリピート施策や休眠顧客の掘り起こし、さらには既存顧客を除外して新規顧客の獲得や認知拡大を狙うなど、幅広い広告戦略に活用できます。
カスタマーマッチで利用できるユーザデータの例は、次のとおりです。
・姓名
・電話番号
・メールアドレス
・住所
・居住国
なお、カスタマーマッチ自体の利用は無料ですが、広告の配信には通常のGoogle広告費用(クリック課金やインプレッション課金)が発生します。
顧客リストを扱う際の「ハッシュ化」
顧客データを取り扱う際に欠かせないのが「ハッシュ化」です。
ハッシュ化とは、元のデータを不規則な文字列に置き換える処理を指し、個人を特定できない形に変換することでセキュリティを高めます。
カスタマーマッチに顧客データをアップロードする際には、自社で事前にハッシュ化を行う方法と、Google広告が提供する自動ハッシュ化機能を利用する方法の2種類があります。
いずれの場合もアップロードされたデータは暗号化された状態で保存され、Googleアカウントに登録されているメールアドレスや電話番号のハッシュ化済みデータと照合されます。
この仕組みにより、顧客データの安全な活用が可能です。企業として顧客データを扱う際には、常に細心の注意を払いましょう。
カスタマーマッチが利用できる配信手法
カスタマーマッチは、Google広告の次のような配信手法で利用できます。
Google検索広告
Googleショッピング広告
Googleディスプレイ広告
デマンドジェネレーション
YouTube広告
このように幅広い配信手法に利用できるため、顧客リストを活用して「購買意欲の高いユーザへの直接的なアプローチ」から「既存顧客を除外して新規ユーザーに絞った認知拡大施策」まで、目的に合わせた施策を展開できます。
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他媒体の類似機能
Google広告のカスタマーマッチに近い仕組みは、他の広告媒体にも用意されています。
名称や細かな仕様に違いはありますが、いずれも「自社が保有する顧客データをアップロードし、広告配信に活用する」という基本的な考え方は共通です。
次の表に、代表的な媒体の類似機能をまとめました。
| 媒体 | 名称 | アップロードできる主なデータ |
| Meta広告 | カスタムオーディエンス | ・メールアドレス ・電話番号 ・モバイル広告主ID ・FacebookアプリユーザーID ・FacebookページユーザーID |
| LINE広告 | オーディエンス(電話番号・メールアドレスアップロードなど) | ・電話番号 ・メールアドレス |
| Yahoo!広告 | オーディエンスリスト | ・アプリ用広告識別子 ・メールアドレス ・電話番号 |
| X(Twitter) 広告 |
リストカスタムオーディエンス | ・メールアドレス ・電話番号 ・X@ユーザー名 ・XユーザーID ・モバイル広告ID |
| TikTok広告 | カスタマーファイルオーディエンス | ・メールアドレス ・電話番号 ・モバイル広告ID |
このように、主要な広告媒体では顧客データを活用したターゲティング機能が提供されています。
カスタマーマッチを活用するメリット
カスタマーマッチは、自社が持つファーストパーティデータを基盤に広告を配信できるため、その他のターゲティング手法にはない独自の強みがあります。
ここでは、カスタマーマッチを活用する4つのメリットについて、詳しく解説します。
ターゲティング精度の向上
カスタマーマッチの大きなメリットは、ターゲティングの精度を高められる点です。
通常のターゲティングでは、ユーザ属性や閲覧履歴をもとにセグメントを作成しますが、カスタマーマッチは自社が保有する顧客データそのものを活用します。
例えば、実際に購入実績のあるユーザや、問い合わせ履歴のあるユーザに絞って広告を配信することで、自社ブランドに強い関心を持つ可能性が高い層に絞り込めます。
また、除外設定を利用して既存顧客を配信対象外にし、新規顧客獲得や認知拡大に集中することも可能です。
デマンドジェネレーションキャンペーンを利用する場合は、優良顧客の類似ユーザ(特徴や行動が似ている新しい見込み客)をターゲティングすることも有効です。
媒体によっては、こうした優良顧客の類似ユーザを活用することで、新規獲得の効率が向上するケースもあります。
このように、「確度の高い層への効率的なアプローチ」や「潜在顧客へのリーチ拡大」などを精度高く実施できる点が、カスタマーマッチならではの強みといえるでしょう。
参考:類似セグメントを使用してオーディエンスを増やす – Google広告 ヘルプ
既存顧客へのリピート促進やアップセル
カスタマーマッチは、既存顧客のリピート促進やアップセルにも効果的です。
例えば、すでに購入経験のあるユーザに新商品の情報を配信したり、定期購入やサービスの利用を継続してもらうためのリマインドを出したりすることで、安定した売り上げにつなげることができます。
さらに、購入頻度や累計購入金額といった条件でリストを作成すれば、特に価値の高い顧客層を抽出して重点的にアプローチすることも可能です。
例えば、累計購入額が一定以上のユーザにプレミアム商品の広告を配信すれば、効率的に売り上げ拡大を狙えるでしょう。
このように、カスタマーマッチは広告配信の精度を高めるだけでなく、顧客生涯価値(LTV)の向上を目指す施策としても有効です。
休眠顧客へのアプローチ
一定期間購入や利用が止まっている「休眠顧客」の掘り起こしを的確に行える点も、カスタマーマッチを活用する大きなメリットの1つです。
休眠顧客はすでにブランドの利用経験があるため、新規顧客よりも購買行動に移行しやすく、広告投資に対して高いリターンが見込める重要なターゲット層といえます。
例えば、「半年以上ログインしていないユーザ」や「1年以上購入が途絶えているユーザ」といった条件でリストを作成すれば、再来訪や購入を促すキャンペーンの効率的な展開が可能です。
広告で期間限定クーポンや特別オファーを提示すれば、商品やサービスへの関心を再び喚起するきっかけになるでしょう。
こうした再購入を促す広告を確実に届けたい場面にも、カスタマーマッチは非常に効果的です。
Cookie規制への対応
近年、プライバシー保護の観点からサードパーティCookieの規制が強まり、従来のリターゲティングが難しくなりつつあります。
例えば、過去に自社サイトを訪問したユーザを追跡して広告を配信する仕組みには、サードパーティCookieが利用されているため、規制の影響によって従来のように精度高く見込み顧客へリーチするのは困難です。
こうした状況の中、自社が直接取得した顧客データを用いるカスタマーマッチは、Cookie規制の影響を受けずにターゲティングが可能です。
さらに、購買履歴や会員登録情報など信頼性の高いデータをもとに配信できるため、従来のCookieベースの手法よりもアプローチの精度を高められます。
このように、規制強化の時代においても安定的に広告を配信できる点も、カスタマーマッチを活用する大きなメリットの1つです。
カスタマーマッチの利用条件
カスタマーマッチを利用するには、まずGoogle広告のポリシーに準拠していることが前提です。
加えて、支払い実績に問題がないことも重要で、未払いなどがある場合は利用が制限されます。これら2つの条件を満たしているかどうかを、事前に確認しておきましょう。
さらに、個別の入札単価調整など高度な機能を利用するには、90日以上の広告運用実績と通算5万米ドル(約700万円)の利用金額が必要です。
このように、カスタマーマッチを最大限活用するためには、継続的で健全な広告運用と、一定規模以上の投資が条件となります。
詳細な条件や機能については、下記公式サイトをご参照下さい。
カスタマーマッチの活用方法
Google広告では、検索広告やショッピング広告、ディスプレイ広告など、様々なキャンペーンタイプがあります。
ここでは、それぞれのキャンペーンにおけるカスタマーマッチの具体的な活用方法を紹介します。
Google検索広告
検索広告では、検索キーワードと顧客データを組み合わせることで、より精度の高いターゲティングが行えます。
例えば、既存顧客が自社ブランドや商品に関連するキーワードを検索した際には「再購入を促す広告」を表示し、購入履歴のないユーザには「初回無料キャンペーン」を訴求するといった使い方が可能です。
Googleショッピング広告
ショッピング広告にカスタマーマッチを組み合わせると、商品検索を行っている既存顧客に対して、より的確なターゲティングが可能です。
例えば、特定のキーワード検索時に既存顧客への入札を強化すれば、上位表示を確保しやすくなります。
これにより、関連商品の購入を促すクロスセルや、上位モデルの提案によるアップセルへとつなげられます。
Googleディスプレイ広告
ディスプレイ広告は、カスタマーマッチと組み合わせると再アプローチから新規顧客獲得まで幅広く活用できます。
例えば、既存顧客リストを除外リストとして設定すれば、広告を新規顧客候補に集中させ、無駄な配信を抑えながら効率的な認知拡大が可能です。
また、既存顧客に対しては、新商品の案内やキャンペーン情報を配信することでリピート購入を促せます。
デマンドジェネレーション
デマンドジェネレーションでは、YouTube(ショート動画を含む)、Discover、Gmail、Googleディスプレイネットワークといった複数の配信面に広告を表示できます。
このデマンドジェネレーションの大きな特長は、カスタマーマッチの顧客データをもとに類似ユーザリストを作成し、ターゲティングに活用できる点です。
これにより、既存顧客に近い新規ユーザへのリーチが可能となり、新規開拓の精度を大きく高められます。
動画広告(YouTube広告)
YouTube広告は、動画を使ってユーザにアプローチできるのが特長です。商品やサービスの魅力を視覚的かつ感覚的に伝えられるため、ブランド想起や商品説明に適しています。
カスタマーマッチと組み合わせると既存顧客や休眠顧客に向けて的確にリーチでき、リピート購入や関心の再喚起を狙えます。
また、除外設定を利用して既存顧客を配信対象から外せば、潜在顧客にブランドの歴史やイメージを伝え、効率的に認知拡大を図ることも可能です。
カスタマーマッチの設定方法
カスタマーマッチを利用するには、まず顧客データをリストとして整備し、それをGoogle広告にアップロードした上でキャンペーンに紐づける必要があります。
ここでは、それぞれの設定手順を解説します。
顧客リストの準備
カスタマーマッチを利用するには、まずGoogle広告への顧客リストの登録が必要です。
登録には、顧客データをまとめたCSVファイルをアップロードする方法と、新しいデータソースを接続して作成する方法があります。
CSVファイルを利用する場合は、事前に顧客データを整理し、リストを作成しておきましょう。
CSVファイルをアップロードする際は、列見出しに必ずGoogleが指定する英語のヘッダ名を正しく入力する必要があります。指定名と対応する項目は次のとおりです。
| 項目 | 列ヘッダの指定名 |
| メールアドレス | |
| 電話番号 | Phone |
| 送付先住所 | First Name / Last Name / Country / Zip |
| モバイルデバイスID | Mobile Device ID |
データフォーマットの詳細については、下記公式サイトをご参照下さい。
参考:Google広告「顧客データファイルのフォーマットについて」
顧客リストのアップロード
顧客リストを用意したら、CSVファイルのアップロード、もしくは新しいデータソースを接続して登録します。それぞれの流れは次のとおりです。
【共通】
管理画面で [ツール] → [共有ライブラリ] → [オーディエンスマネージャー] を開く

画面上部の [データセグメント] タブを選択し、「+」ボタンをクリック

[顧客リスト] を選択

【新しいデータソースを接続して作成する場合】
1.[データソース] で [新しいデータソースを接続する] を選び、リストから接続先を選択

2.接続方法を選択し、[続行] をクリック

3.画面表示に沿って接続設定を進め、接続内容を確認して[完了] をクリック

【顧客データをまとめたCSVファイルをアップロードする場合】
1.「ファイルを手動でアップロードする」を選択し、「続行」をクリック

2.「セグメント名」「顧客タイプ」「データの種類」を入力・選択する

3.CSVファイルを画面にドロップもしくはフォルダから参照してアップロードする

4.「Googleのポリシーに従ってデータを収集・共有している」旨に同意チェックを入れる

5.有効期間を設定(最大540日)し、「保存して次へ」をクリック

キャンペーン・広告グループへの紐づけ
リストをアップロードしたら、実際のキャンペーンや広告グループに「追加」、または「除外」の設定を行います。
目的に応じて、既存顧客に配信したい場合は追加、既存顧客を配信対象から外したい場合は除外と使い分けましょう。
【追加する場合】
1.管理画面で [キャンペーン] → [オーディエンス] を選択

2.[オーディエンスセグメントを追加] をクリック
![[オーディエンスセグメントを追加] をクリック](https://www.medix-inc.co.jp/webbu/wp-content/uploads/image4-3-620x392.png)
3.「キャンペーン」「広告グループ」のいずれかをクリックし、該当するキャンペーンや広告グループを指定

4.ターゲットにするセグメントのチェックを入れ、[保存]

【除外する場合】
1.管理画面で [キャンペーン] → [オーディエンス] を選択
2.「除外設定を編集」を開く

3.「キャンペーン」「広告グループ」のいずれかをクリックし、該当するキャンペーンや広告グループを指定

4.除外したいセグメントを選択し、[保存]
![除外したいセグメントを選択し、[保存]](https://www.medix-inc.co.jp/webbu/wp-content/uploads/image10-3-620x423.png)
カスタマーマッチを活用する際の注意点
カスタマーマッチは適切に運用しなければ効果が得られないだけでなく、個人情報保護の観点からリスクを招く可能性もあるため、注意が必要です。
ここでは、カスタマーマッチを活用する際の注意点を紹介します。
個人情報を適切に管理する
カスタマーマッチに利用できるのは、顧客から適切な同意を得て自社が直接収集した情報に限られます。
第三者から購入したリストや、同意を得ずに収集したデータの使用は認められていません。
これはGoogleのポリシーだけでなく、個人情報保護法の遵守などコンプライアンス面でも重要です。
個人情報を不適切に扱うとアカウント停止や法的リスクにつながるおそれがあるため、十分に注意して下さい。
顧客リストの正確性を確認する
アップロードするリストの正確性は、カスタマーマッチの成果を大きく左右します。
古いデータや誤った情報が含まれていると、Googleアカウントと照合できず、マッチ率の低下につながります。
さらに、リストのフォーマットに不備があるとアップロード時にエラーとなり、そもそも利用できません。
CSVファイルを作成する際には、Googleが指定する列ヘッダが正しく設定されているか、最新の情報であるかを必ず確認しましょう。
十分な件数のリストを用意する
顧客リストの件数が少ないと配信対象が限定され、十分に広告を配信できません。
Googleでは、カスタマーマッチを利用する際に最低1,000件以上の顧客データの登録が推奨されています。
安定的に広告を配信するためには、最初から一定規模のリストを準備し、必要に応じて継続的にデータを拡充していくことが重要です。
Googleユーザとのマッチ率を確認する
アップロードした顧客データが、すべてGoogleのデータと一致するとは限りません。
「情報が誤っている」「Googleユーザではない」といった理由から、照合できないデータが含まれる場合もあります。
そのため、実際にどの程度一致しているかを示す「マッチ率」を必ず確認しましょう。
マッチ率はファイルのアップロード完了ページに表示されるため、定期的にチェックして改善することが大切です。
マッチ率が高いほど、カスタマーマッチによって広告を的確に届けられる可能性が高まります。
顧客リストを定期的に更新する
カスタマーマッチを効果的に活用するために、常に最新の顧客データを反映させましょう。
特に除外リストを運用する場合、新たにコンバージョンしたユーザをリスト追加しておかないと、既存顧客に不要な広告が配信されるリスクがあります。
また、カスタマーマッチのリスト有効期間は最大540日であり、継続して利用するには過去540日以内に少なくとも100人のユーザを追加、または更新しなければなりません。
サードパーティのCRMと継続的に同期するか、定期的に手動で更新する体制を整えておく必要があります。
まとめ
カスタマーマッチは、自社が保有するファーストパーティデータを活用し、既存顧客へのリピート促進から休眠顧客の掘り起こし、新規顧客の獲得まで幅広い施策に役立つ手法です。
Cookie規制が強まる中でも安定したターゲティングが可能で、Google検索広告やショッピング広告など、複数の配信手法で柔軟に活用できます。
さらに広告効果や運用効率を高めたい場合には、専門的なマーケティング支援サービスの活用も検討してみて下さい。
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