広告の効果が悪い、悪化した——
現場ではよく使う言葉ですが、最初に見る指標や要因特定の方法、検証の過程は人によって異なります。
今回は、メディックス歴20年以上の方を含むベテラン広告運用者と、入社2,3年目の新人アカウントプランナーを交え、どのような視点で効果改善を図るのか、普段意識して見ている点やメディックスとして大事にしているスタンスなどを座談会形式で伺いました。
記事前半は、要因特定の手順や施策のタイミングなど実践的な内容で、後半は、成果が出ない時期のクライアントコミュニケーションやメディックスの追求する「本質的な課題解決」について触れています。
効果悪化時の分析の切り口にお悩みの運用者やマーケター、ベテランの思考プロセスを知りたい方はぜひ、最後までご覧ください。
目次
メンバー紹介
シニアメンバー(運用歴5年以上)
・當流谷 圭
メディックスに新卒で入社し20年目。広告運用領域を中心に大規模案件を担当し、運用改善だけではなくLTVを加味した運用設計など、ROAS・ROI改善も得意とする。趣味は、生き物の飼育(爬虫類と蟻)。
・ベテランA
メディックスに中途入社し15年目。各職種を経験し、主に広告運用ディレクターとして従事。
担当した案件の9割以上がEC業種で、現在はEC案件特化チームに所属し、運用改善からリピートをベースとしたユーザ分析なども行っている。
・ベテランB
メディックスに新卒入社し12年目。広告運用ディレクターとして大規模案件を中心に従事。また、広告運用の診断ツールの開発責任者。趣味は怪談話と都市伝説。
・ベテランC
WEB代理店からメディックスに中途入社し5年目。広告運用ディレクターとしてECやジム関連など、toC向け商材の案件を担当。
・若手A:新卒3年目 アカウントプランナー
・若手B:新卒2年目 アカウントプランナー
1.どこで・いつから悪化したかの確認
進行:それでは早速ですが、広告効果が悪化した際、皆さんはまずどこの数値を見ますか?
ベテランB:CPAとその他の主要指標を最初に見ますね。あわせて「いつから悪化しているのか」の時期を特定します。
當流谷:そうですね。僕もまず「どこが」「いつから」を特定します。
前年比、前月比、先週比でデータを確認し、コンバージョン(CV)、コスト、CPAの動きを見るかな。悪化の初動を捉えるために、まずは期間の切り分けと基本指標の確認から入る。
――前年データがなく比較軸を作リ方に迷った若手も
若手B:最近始まった案件を担当しているのですが、前年データが出せなくて困っています。
先月比でのCPA推移や、日々どの商品が売れているかを追っていますが、サイト自体も立ち上がって2年程度なので年比較だとブレが大きくて……。
當流谷:より精度の高い分析をするために、可能であればクライアントから過去の傾向やデータを共有いただいた方がいいね。
それが難しい場合、僕ならCVの手前にある「マイクロコンバージョン(カート追加やフォーム開始など)」を見る。
あるいは、Google Analyticsなどの解析データで、ユーザがどこで離脱しているかを確認してみて、直帰率が高ければキーワードやターゲティング、LPの見直しにかかるかな。
ベテランA:私は、前年比較以上にクライアントの「年間目標」に対する進捗率を意識してますね。
「月次目標に対して何ポイント前進できているか」を一緒に確認すると、目線がズレなくなりますよ。
ベテランC:僕が目標との乖離を見るときは、まず配下の施策ごとの「コストシェア(予算配分)」を確認します。
予算配分に問題がないのに目標未達なら、既存施策に穴がないか(配信面の拡張余地など)を探ってみて、それでもダメなら新規施策やLP改善を検討する、という流れで。
若手B:なるほど…切り口は色々ありそうですね。
▧「前年比」で比較できない場合など、その他の比較軸 ▧
・日々の売れ筋商品の動向
・クライアントの持つ過去データ
・年間目標に対する進捗
・施策間のコストシェアの変動
前年データがないというのは、新規案件では珍しくないことですが、その際は「比較軸を作りにいく」ことで分析の精度が変わりそうです。
2.【要因特定】原因を突き止めるドリルダウン
進行:それでは、どこで・いつから悪化したかが判明した後、どのように具体的な原因へ迫っていくのでしょうか?
當流谷:感覚やトレンドで片付けず、全体から段階的にドリルダウンして解明していきます。リスティング広告を例にすると、次の順序で絞り込むことが多いね。
※以下、説明内容を分かりやすくまとめています。
- ステップ1:アカウント全体〜キャンペーン
指名と一般キーワード(重要度別)のコストシェアや効果を確認。 - ステップ2:主要キーワードの分解
悪化しているキャンペーン内のメインワードを特定し、CPCが高騰しているのか、CVRが低下しているのかを確認。 - ステップ3:原因別の深掘り
- CPC高騰の場合:オークション分析や品質スコアの変化を確認
- CVR低下の場合:検索クエリに無駄な語句が混ざっていないか、競合の参入がないかを分析(必要に応じてGAの数値やSEOのCVR推移とも比較)
こんな感じで要因を特定して、そのKWは昨年どうだったのかも確認する。同じ動きで低下してるのであればトレンドって形で着地することもあるし。
例えば、アパレルECだと気温によってトレンドは前後するから、サイト全体のCVR(よく使うのはSEOのCVR)の推移から、例年と同じ挙動なのか見たり。
これはあくまで一例だけど、全体からどんどんドリルダウンしていくことで、「何が、どの理由で、こうなった」っていうのがだいたい解明できる。
ここにGAなどの数値変化も見ながら最終的な結論に持って行きますね。
進行:全方位で闇雲に原因を探すんじゃなく、大きな要素から順を追って絞り込んでいくんですね。
管理画面の指標に異常がないケース(実例)
當流谷:過去、配信設定も競合の動きも変わっていないのにCVRだけが落ち続けている案件があって、管理画面やLP内のユーザ挙動を見ても異常はないし、検討度の浅いキーワードが増えたわけでもない、なぜ?ってことがあったんだよね。
ベテランC:設定を変えていないのに落ちるパターン、一番原因特定が難しいですね……。結局、原因は何だったんですか?
當流谷:そのときは、ちょうどクライアント側で外部決済システムを新規導入したタイミングで、Google Analyticsのパラメータ欠損が発生したことによって、広告経由のコンバージョンが正しく計測できていなかった、というのが原因だった。
クライアント側のシステム変更とかサイト改修が、広告効果の数値に直結するケースもあるから、日頃から些細なことでもクライアントと密に情報共有できる関係性を築いておくのは大事だなぁと。
ベテランC:おお、そういうパターンは稀にありますよね。
一見、広告と無関係なように見えても、実はつながっていたり、運用のヒントになったりすることもあるので、情報共有しやすい関係性になることは大事ですよね。
3.【分析の前提】管理画面を見るときに気をつけていること
――話題は、日常的な管理画面の見方に
若手A:1年目の頃、CPAが悪化したらCVRとCPCの変動ばかり見てしまっていて、コストシェアを意識できていませんでした。先輩から「そこを改善しても全体へのインパクトは小さいよね」と指摘されてハッとしました。
ベテランB:若手の頃は特に、数値を“点”で見てしまいがちだよね。まずは、最も予算を使っているインパクトの大きいメディアやキャンペーンが機能しているかを見る。シェアが高い順に確認していくのが鉄則かと。
ベテランC:耳が痛いです(笑)。
當流谷:あとは、CPAが悪化したとき、CVRとCPCだけを見ていると因果関係を見誤っちゃうんだよね。
普段から「この単語やカテゴリが含まれるキーワードは効果が高い」という基準を自分の中に持っておくことも大事になってくる。
ベテランC:昔先輩に聞いた話で、花屋さんの案件で「当日」とか「即日」で検索してる人はCVRがめちゃ高いらしいんです。その日に送れるからすぐ買っちゃう。そういうワードは常にちゃんと出しておかないとダメだよね、というのはありますね。
當流谷:まさにそれ。「この軸の掛け合わせワードはCPC〇〇円、CVR〇%が基準」という数値を把握していれば、主要ワードに変化がない時に「他のどの部分で異常が起きているか」を瞬時に察知できるしね。
要因特定をしやすくする、という観点でいうと、レポートの型化もあるけど、適切な「アカウント設計」と「日々のメンテナンス」は欠かせないと思う。
例えば、一般キャンペーンに社名ワードの除外設定が漏れていると、意図しない自動マッチで数値がブレて要因特定が難しくなったりする。無駄クエリの除外とか、適切なアカウント設計を徹底することが、結果的に速くて正確な分析につながるなと。
4.【施策の実施】テストのタイミングと施策の優先順位
進行:次に、効果悪化の要因が分かったあと、実際にテストや施策を実施するとなった場合のタイミングについて聞いていけたらと思います。
若手B:原因が特定できた後、新しい改善施策を始めるタイミングに迷うことがあるんですけど、皆さんどうですか?
當流谷:状況によっては、期初にテストをした方がいいケースがあるよね。仮に失敗しても、期初であれば年間の中でカバーやリカバリー提案ができるし、成功すれば後半で一気に成果を刈り取れる。
逆に、目標数値がギリギリのタイミングでテストすると、失敗した際に挽回が厳しかったり。
若手B:目標ギリギリの時期は、クライアントとしてもテストに慎重になりますよね。
當流谷:そうそう。あとは、やはり想定値を持っておくこと。初動でどういう数字になっていれば問題ないかっていうのを見れるようにしておく。
進行:やりたい施策が複数ある場合、どう優先順位をつけますか?
當流谷:基本は「最も成果が見込める施策」から優先するね。
例えば、Google広告で成果が出たターゲティングセグメントを、Yahoo!とかほかの媒体に水平展開する施策なんかは優先度が高くなる。
あとは、検証精度を落とさないために「施策同士を重ねない」ことも大事だね。
「広告文の変更」と「自動入札ルールの変更」を同時にやっちゃうと、どっちが効いたのか判断できなくなるし。
施策ごとに変化を期待する指標(CTRなのかCPCなのか)を明確にして、優先順位を決めて実行に移すイメージ。
5.成果が出ない時期のクライアントコミュニケーション
成果が出ていないとき、クライアントどのように向き合うのか
進行:ここまで、皆さんの数値の見方や要因特定の方法、日々気をつけている点などを伺ってきました。
最後に、成果が出ない時期にどういう姿勢で向き合っているか、クライアントとのコミュニケーションで意識していることを教えてください。
ベテランA:効果が芳しくないときこそ、「未来がある」と伝えることが大事だと思っています。
「次はこういうアクションをしていきます」という未来に向けた行動プランを考え、提示し続ける。手が止まって効果が悪いままだと、改善もしないし、クライアントを不安にさせてしまいます。
當流谷:すごく同意です。あとは、効果が良くないときほど、コミュニケーションの頻度を上げる必要がある。僕も1〜2年目の頃は、月末の定例会で初めて「今月はダメでした」と報告して怒られることも多かったです。
今は、初速が悪い、あるいは新施策の手応えがない段階で、「滑り出しがよくないので、ここを注視して手を打ちます」とすぐに伝えるようにしてますね。
あと、効果悪化の可能性が予測できるのであれば、事前に「一時的にこういう動き(悪化)になりそうです」とお伝えしておくことも大切。
ベテランA:うんうん。
あとは、広告単体の数値だけじゃなく、サイト全体の動きとか市場のトレンドを俯瞰して見て、その他にも要因がある場合はお伝えしてますね。
例えば、広告の効果が20%悪化していて、サイト全体(SEOなどを含む)では30%悪化していた、みたいなケースもあるので。
トレンドの影響は、SEOよりも広告の方が受けやすい面もあるし、全体の数値をフラットに見て、客観的な事実として「何が本当の原因なのか」を共有することで、クライアントと正しい現状認識を共有できると思います。
6.「単なる運用者」から「事業のパートナー」へ
若手B:成果の良し悪しに関わらないのですが…
僕はクライアントの担当者は何をしたら喜んでくれるだろうか、事業部長であれば、社長であれば…と様々な目線で考える視点を大切にしています。日々の運用の中で、まずは担当者の方の目線に立って考えることを意識できるようになってきたかな、と思っています。
當流谷:それはまさに「本質的な課題」を捉えるということだね。
僕たち広告代理店は、広告のプロではあるけど、クライアントの事業を内側で動かしている当事者ではないからね。
だからこそ、クライアントの事業や組織への理解度をどれだけ深められるか、というのはアカウントプランナーやディレクターが本来意識すべき部分だと思います。
進行:深い話になってきましたね。
確かに、広告の運用はある意味求められている最低ラインであって、「事業の本質的な課題に対して向き合っていくれる代理店」になれればいいですよね。
當流谷:そうなんだよね。CPCやCVRの数値を追うことは当然重要だけど、今はAIによる自動化もどんどん進んでる。
これからの時代の代理店として、
「クライアントの事業理解をどこまで深められるか」
「今後起こり得る課題に対して予防策を提示できるか」
「成果が悪化している根本的な原因を理解し、対等に議論できるか」
ってあたりがすごく重要で、付加価値になっていく。
広告枠の運用にとどまらずに、事業の本質的な課題解決をサポートできる存在になることを目指していきたいね。
7. まとめ
「CPAが悪化した」という目の前の事象に対し、経験が浅いうちは、CVRやCPCといった管理画面上の「点」に目が行きがちです。
ベテラン運用者たちは常に、全体へのインパクトや予算のシェア、さらにはクライアントの年間目標といった「面」で事象を捉えていました。
また、「効果が悪い」ときのコミュニケーションで意識すべきことや、クライアントのビジネスの「本質的な課題」に向き合うことの重要性から、代理店の提供できる価値に話が広がっていきました。
今回の座談会を通して見えてきたのは、広告効果の悪化という厳しい場面でこそ、運用者の真価が問われるということ。
そしてそんなときこそ、クライアントの事業課題に深く入り込み、信頼関係を一段引き上げるチャンスなのかもしれないということです。
「現状の広告成果に頭打ち感がある」
「効果が悪化した際、代理店から納得のいく説明や改善案が出てこない」
とお悩みのご担当者様は、ぜひ一度メディックスにご相談ください。
単なる広告運用の代行にとどまらない、事業成長を共に牽引するパートナーとして真摯に伴走いたします。
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