広告効果の可視化を事業成果ベースで。BigQueryとLooker Studioでデータ基盤を構築する3ステップ|ウェブ部

広告効果の可視化を事業成果ベースで。BigQueryとLooker Studioでデータ基盤を構築する3ステップ

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はじめに

広告の獲得単価(CPA)は目標をクリアしているのに、なぜか実売上が伸びないWebマーケティングの現場で、このような悩みに直面していませんか?

多くの広告運用では、媒体管理画面上のCPAを指標に最適化を行いますが、実はその数値が必ずしも成約や売上といった事業貢献に直結しているとは限りません。事業成果で広告を正しく評価したいというニーズは高いものの、現実にはツール間のデータが分断されており、手動でのExcel集計に膨大な工数がかかって分析まで手が回らないという課題を抱える企業が少なくありません。

本記事では、この課題を突破し、自社で事業成果に基づく広告評価を実現するための具体的な3つのステップを解説します。

広告効果を事業成果ベースで評価するメリット

なぜ、Web上のコンバージョン数値(Web成果)だけでなく、その先の事業成果で評価すべきなのでしょうか。その主なメリットは3つあります。

正しい投資判断が可能になる

Web上のCPAが安くても成約率が低い媒体と、CPAが高くても成約率が高い媒体では、最終的な成約単価で評価した際に優劣が逆転することがあります。事業成果をベースにすることで、利益に貢献している媒体やキャンペーンを見極め、適切な予算配分を行えるようになります。

Web上の数値に惑わされない

資料請求や初回購入といったWeb成果の件数だけでなく、その後の商談化率や継続率といった「質」を把握できるようになります。これにより、事業への貢献度が高い質の良いユーザーを効率的に獲得できているかを可視化できます。

マーケティング活動の価値を証明できる

営業部門が追う商談・成約や、事業部門が管理するLTV・売上と広告データを紐づけることで、組織全体で共通の指標を持つことができます。マーケティング活動がどれだけ最終的な事業利益に寄与したかを明確に示すことが可能になります。

事業成果ベースの広告評価:3つのステップ

・Step1:業種別の事業成果KPIを正しく定義する

データ統合を始める前に、まずは自社のビジネスにおいて何を最終成果とするかを明確に定めましょう。業種によって見るべき指標の事例は次の通りです。

BtoB企業:商談化数、成約数、成約CPA
EC・通販:定期加入数、nヶ月以内のリピート数、ROAS
人材紹介:履歴書登録数、成約数、成約CPA

・Step2:データを蓄積・可視化するためのアーキテクチャを整える

次に、データを統合するための仕組み(アーキテクチャ)を検討します。多くの担当者が直面する手動集計の限界を突破するためには、クラウド基盤の活用が最適解となります。

従来のExcel管理から脱却すべき理由

日々蓄積される膨大な広告データと基幹データをExcelやスプレッドシートのみで手動で突き合わせ続けるのは、工数面でも正確性の面でも限界があります。データの量が増えるほど処理は重くなり、ミスも発生しやすくなります。この手動集計の疲弊から抜け出すために、データを自動で溜めて処理する専用の場所が必要となります。

自動化を実現するデータ統合の全体像

事業成果での広告評価を実現するためのアーキテクチャは、大きく分けて取得・統合・可視化で構成されます。

どのようなツールを使い、どのデータを扱うのか、その全体像は次の通りです。

■扱うデータ:
広告媒体データ:Google、Yahoo!、Meta(Facebook/Instagram)等の広告コストや実績。
GA4データ:Webサイト上でのユーザー行動や流入経路の記録。
事業成果データ:SFAや基幹DBに保管されている商談・成約・リピート等の実績。

■使用するツール:
ETLツール(Databeat等):各広告媒体のデータを自動で取得するためのコネクタ。
Google BigQuery:バラバラのデータを一箇所に集約し、紐づけて保管する統合(DWH)の箱。
Looker Studio:統合されたデータをグラフや表として表現する可視化(BI)の場。

なぜBigQuery×Looker Studioなのか

データを蓄積・統合する箱にはGoogle BigQueryを、可視化する場にはLooker Studioの組み合わせを推奨します。

Google BigQuery:膨大なデータも数秒で処理できる高速性を持ち、Excelでは困難な大量の広告データも容易に扱えます。また、将来的なAI活用も見据えた拡張性があります。

Looker Studio:BigQueryとの接続がスムーズで、Googleアカウントがあれば無料で利用できるBIツールです。低コストかつスピーディに構築を開始できる点が大きな利点です。

広告データやGA4データ、事業成果データをどう連携するか

最初から複雑なシステム連携を目指す必要はありません。まずは次のような運用からスタートしましょう。

広告データの連携:複数の媒体データを自動でBigQueryに集約するためには、API連携が可能なETLツール(例:Databeatなど)を活用すると、日々のデータ収集を自動化できます。

GA4データの連携:GA4にはBigQueryへの直接エクスポート機能が標準で備わっています。GA4の管理画面から簡単な操作ですぐに連携設定ができ、Webサイト上のユーザー行動データをBigQueryへ自動的に蓄積することが可能です。

事業成果データの連携:ここがスモールスタートの肝です。複雑な基幹システム連携は後回しにし、まずは「紐付けID(購入IDやリードID)」「成果発生日」「成果名」といった最低限必要な項目だけをスプレッドシートに書き出し、BigQueryに連携して可視化する運用から始めます。

紐付けの仕組み

バラバラのデータを統合し、どの広告から流入したユーザーが成約に至ったかを1対1で特定するためには、以下の2段階の紐付けを行います。

広告データとGA4データの紐付け:広告の入稿先URLにUTMパラメータを設置します。これにより、GA4側でどの媒体の、どのキャンペーンから来たユーザーかを判別できるようになります。

GA4データと事業成果データの紐付け:Webサイトでのコンバージョン(資料請求や購入)時に、カートシステムやSFAから発行される一意のID(購入ID・リードID)を、GA4のカスタムディメンションとして取得するように設定します。

このIDを共通のキーにすることで、GA4に蓄積された広告流入データと、スプレッドシート等で用意したオフラインの成約データをBigQuery上で正確に統合することが可能になります。

・Step3:データを可視化する

データが統合されたら、誰もが直感的に状況を把握できるダッシュボードを作成しましょう。単に数字を追うだけでなく、媒体ごとの投資対効果や、事業成果に繋がっているかを一目で判断できるわかりやすい可視化を目指します。

参考ダッシュボード例:アドパフォーマンスダッシュボードサンプル

まとめ

広告運用の成果を最大化するためには、従来のWeb上のCPA評価を卒業し、成約やLTVといった事業成果に基づく本質的な投資判断へとシフトすることが極めて重要です。

まずは、手元にあるデータを活用したスモールスタートから始めてみてください。エンジニアによる大規模な開発を待たずとも、必要最低限のデータをスプレッドシート等で管理し、BigQueryとLooker Studioを組み合わせることで、精度の高い分析環境は構築可能です。

分析と改善のサイクルを回す時間を確保し、事業の確実な成長に繋げていきましょう。

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