ウェブ広告の配信に関わっている人であれば、DSPという言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
しかし、DSPがどのような仕組みで広告を配信しているのか、どのようなメリットがあるのか疑問に感じている人も多いと思います。
そこで本記事では、DSPの仕組みをわかりやすく解説し、どのようなメリットがあるのかを紹介します。
DSPを広告運用に活用していきたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
DSPとは
DSPとは、「Demand Side Platform(デマンド サイド プラットフォーム)」の略語で、インターネット広告における広告効果の最大化を目的としたサービスのことです。
広告主は、配信したいターゲットや予算などを設定し、クリエイティブを入稿すれば、あとはDSPが自動的に広告枠の買い付けから最適な広告配信を行ってくれます。
また、DSPは、広告を配信する「枠」単位ではなく、興味・関心を持っているユーザ「人」単位での広告配信(ターゲティング)ができる点で、従来の広告枠単位での配信方法と異なります。
ターゲティングも、各DSPによって選定のアルゴリズムが異なっていたり、DMP(※)との連携でより詳細なターゲティングが可能になっていたり、広告配信の幅を劇的に増やすことができます。
※DMP:Data Management Platform(データ・マネジメント・プラットフォーム) の略で、マーケティング活動に役立つ様々なデータを収集、統合、分析、そして活用するためのプラットフォームです。膨大なデータの保管庫に、分析・統合機能と他のマーケティングツールとの連携機能が備わっているイメージです。
「広告が『枠から人へ』変化した。」と、よく言われているように、性別や年齢、もしくは趣味趣向の異なる様々な属性のユーザへ、なるべく手間をかけず効果的に広告を配信したいという広告主にとって、DSPは相性の良いツールとなるでしょう。
DSPの仕組み
DSPを利用して広告を配信する際、広告主の行う作業はいたってシンプルで、広告を配信したいターゲットや予算などを設定して、バナーを入稿するだけです。広告の配信はDSPが一括で行ってくれます。
実際に広告が配信される際には、SSP(Supply Side Platform)からのリクエストに応じて、DSPがどのような広告枠をいくらで入札するかを決定しています。入札の言葉どおり、広告枠の買い付けはDSP同士のオークションとなるため、最も高い金額で入札したDSPが広告を配信する権利を得ることができます。
※正確には、多くのDSPでセカンドプライスオークション制度を導入しており、実際に必要とされる入札額は、2番目の額+1円のケースが多いです。
また、サイトへ往訪したユーザが広告を配信したいターゲットかどうかについては、DSPのCookie(サイト閲覧履歴、閲覧日時、リファラー情報、キーワードなど)から取得して判別しています。そのため、事前にユーザがWebを回遊する中でDSPのCookieに接触しており、かつDSPのCookieに様々な情報を保持している状態であるほど、ターゲティングの精度は高まります。
DSPを利用した広告配信の流れは次のとおりです。
- ユーザがWebサイトにアクセスする
- WebサイトがSSPに広告リクエストを送信する
- SSPが複数のDSPに入札リクエストを転送する
- 各DSPがリアルタイム入札(RTB:Real Time Bidding)※で入札を行い、最も高い入札価格を提示したDSPが落札し、SSPへ入札レスポンスを返す
※リアルタイム入札 (RTB:Real Time Bidding):広告枠の買い付けをリアルタイムのオークション形式で行う仕組みのこと
- SSPは落札したDSPをWebサイトへ送信する
- Webサイトは落札したDSPに広告リクエストを送信する
- DSPから広告が配信され、Webサイトに表示される
このプロセス全体は非常に高速で処理され、通常は0.1秒以内に完了するため、広告を表示するまでにユーザを待たせることはありません。
アドネットワークとの違い
DSPとアドネットワークは、どちらもインターネット広告配信に使われる仕組みですが、広告主から見た役割が異なります。
簡単に言うと、アドネットワークは広告掲載枠をまとめた「配信網」であり、DSPは様々なアドネットワークを含む広告枠を買い付け、広告配信を最適化する「サービス」です。
アドネットワークでは、WebサイトやSNS、アプリなど様々な配信面を一括で管理していて、配信面を最適化します。代表的なものに、GDN(Googleディスプレイネットワーク)やYDA(Yahooディスプレイ広告)などがあります。
アドネットワークで管理している広告枠は、外部のDSPと接続していない場合、そのアドネットワーク経由でしか広告を掲載することができません。
GDNとYDAについては下記の記事にて詳しく解説しています。
GDN:GDNとは?|配信面やバナーサイズ、ターゲティングを解説!
YDA:YDA(Yahoo! ディスプレイ広告)とは?GDNとの違いと導入ガイド
SSPとの違い
DSPは、Demand Side Platformの略称で、需要側、つまり「広告主側」の収益を最大化するためのサービスである一方、SSPはSupply Side Platformの略称で、供給側、つまり「メディア側」の広告枠の収益を最大化するためのサービスです。
広告の掲載枠を持つメディアは、SSPへ保有する広告枠の情報を提供し、SSPは複数の広告主(DSP経由など)からの入札を受け付け、リアルタイム入札(RTB)で最も高値をつけた広告主に広告枠を販売します。
例えば、あなたが広告枠を販売して収益を得たいメディアの運営者だとすると、SSPを利用して広告枠の情報を提供することで、自動的に最も高値をつけた広告主に広告枠を販売することが可能となります。
このように、DSPとSSPは対をなすような関係にあります。
DSPのメリット
DSPのメリットは主に2つあります。
サイトを横断して効果を最大化できる
DSPは複数のSSPと接続しているため、SSPを通じて多くのサイト、ユーザに広告を配信することができます。
また、すべての広告枠に対して一律の金額で入札をするわけではなく、広告の効果が最大化されるように、予算や効果に応じてオークションごとに最適な入札価格がリアルタイムで設定されます。
そのため、広告枠ごとに手動で管理しなくても、自動で調整されるため、運用工数を抑えつつ、サイトを横断して効果を最大化することが期待できます。
独自のデータを活用したターゲティングができる
DSPでは、Cookie情報を元に性別、年代、興味関心など「人」に対してターゲティングができます。
DSPによっては、独自のデータを包有していることや、独自のデータを保有しているパートナー企業とデータ連携していることがあり、独自性が高いターゲティングが可能なサービスがあります。
例えば、ECサイトでの購買履歴を活用したターゲティングや、メディアの会員情報を活用したターゲティングなど、独自のデータを活用したユニークなターゲティングが可能です。
そのため、他の広告媒体ではターゲティングできないユーザにピンポイントでリーチしたい場合に効果的です。
代表的なDSPサービス(2025年4月更新)
Criteo
CRITEO株式会社が提供するDSPで、フィードを活用したダイナミック広告が特長です。
フィードのデータを基に、商品画像・リンク先・価格などがセットになったバナーを自動で作成してくれるため、EC業界に適しています。
UNIVERSE Ads
株式会社マイクロアドが提供するDSPで、AIの独自アルゴリズムによる、適正な価格での入札と広告配信が特長です。
また、同社で提供している業界特化型のマーケティングデータプラットフォームとの接続ができるため、各業種の消費行動に即したターゲティングができます。
Logicad
ソニーグループであるSMN株式会社が提供するDSPで、独自開発した人工知能「VALIS-Engine」を活用した広告配信や、認知から刈り取りまでフルファネルで活用できることが特長です。
配信メニューも豊富で、「VALIS-Engine」を活用した拡張配信や、テレビCMと連動した広告配信などがあります。詳しくは、「継続率90%のソニーグループDSP「Logicad」の特長」で解説しています。
Red
株式会社フリークアウトが提供するDSPで、国内最大級の月間8,500 億インプレッションを超える広告枠の在庫を有しています。
ビデオ、ネイティブ、ディスプレイの各種フォーマットに、独自のターゲティングで配信できることが特長です。
まとめ
DSPは、様々なアドネットワークを含む広告枠を買い付け、広告配信を最適化する「プラットフォーム」です。
また、広告を配信する「枠」単位ではなく、興味・関心を持っているユーザ「人」単位での広告配信(ターゲティング)ができる点で、従来の広告枠単位での配信方法と異なります。
DSPによって「枠から人へ」の広告配信が可能になってかなり経ちますが、それにともないDSP自体の広告表示ロジックの複雑化、DMPなどの第三者データとの連携、リターゲティングやオーディエンス拡張による広告表示対象の選定など、その機能は日々進化を続けています。
ぜひ、DSPやインターネット広告の配信の仕組みを正しく理解し、効果的な広告配信を行いましょう。