Microsoft社は、アメリカ合衆国ワシントン州に本社を置く、ソフトウェアを開発し販売する会社です。パソコンOSとしてWindowsを開発し、Windows向けのサービスとしてbing、Edgeブラウザなど様々なサービスを開発しています。
そんなMicrosoft社の提供するMicrosoft広告は、Google広告やYahoo!広告と比べると、利用している企業が少ないため、新たなユーザの開拓に向けて取り組んでみたい方も多いのではないでしょうか。
本記事では、Microsoft広告の基本的な特長や種類から、始め方や注意点まで解説します。
Microsoft広告について理解を深めたい方はぜひ、参考にしてください。
目次
Microsoft(マイクロソフト)広告とは?
Microsoft広告とは、Microsoft社が提供する運用型の広告プラットフォームで、検索連動型広告とディスプレイ広告の両方を配信することができるサービスです。
2022年5月から日本市場でも正式に提供が開始され、Microsoftの広告ネットワーク上に広告を配信することができるようになりました。
Microsoft広告の特長、他媒体との違い
Microsoft広告は、Microsoft独自のネットワークで配信するため、Google広告やYahoo!広告と異なる特長がいくつかあります。
①利用者の規模
Microsoftの提供するブラウザやサービスの利用者が多いことは、特長の1つです。
会社などでビジネス利用されるPCでは、WindowsのPCが支給されることも多く、世界全体におけるPCのOSシェア率は、Windowsが1位で71.66%を占めています。日本国内においても、61.4%と約6割を占めています。(2025年3月時点)
Window OSの利用者は、推奨の設定となる検索エンジン(Bing)、メールツール(Outlook)をそのまま利用するケースが多く、Bingの月間利用者数は5.95億人、Outlookの月間利用者数は1.84億人(メールサービスの中で2位)と、多くの利用者を抱えています。
そのため、Microsoft広告は、Google広告やYahoo!広告でカバーできない、多くのユーザにアプローチできると言えます。
②ユーザ属性
日本国内では、Bing、MSN、Outlook、MicrosoftGames、M365などMicrosoftサービスの利用者には男性が多い傾向があります。(グラフ左)
また、利用者の年代においては、MicrosoftGames以外は45歳以上のユーザが半数以上を占め、若年層よりも45歳以上の利用者が多いことが分かります。(グラフ右)
▼国内のMicrosoftユーザのデモグラフィック
Googleの利用者と比較しても、「男性比率が高い」「16~24/45歳以上の割合が高い」という特長が見られるほか、「年収レンジが高い」「意思決定者の割合が高い」「正社員/個人事業主の割合が高い」「PCユーザの割合が高い」という特長もあります。
▼Googleと比較したユーザ属性
■:Microsoft ■:Google
Microsoft広告の種類
Microsoft広告では、広告主の目的や商材に合わせて、「検索広告」と「オーディエンス広告(ディスプレイ広告)」の2種類が配信可能です。
それぞれの配信面や特長を理解し、適切な配信方法を選択しましょう。
検索広告
検索広告は、ユーザが検索エンジンで特定のキーワードを検索した際に、検索結果に表示される広告です。
Microsoft広告では、Microsoft社の提供する検索エンジンBingで配信されます。
また、Microsoft広告の検索広告では、関連性が高い、またはパフォーマンスを向上できると判断された場合、オーディエンス広告の掲載面にも表示される可能性があります。
オーディエンス広告の配信面に表示したくない場合は、配信先を指定して除外するなどの対応が必要です。
配信形態には次の種類があります。
-
- テキスト広告
通常の検索結果と同じように、テキストベースで表示されます。
配信方法は、「動的検索広告」と「レスポンシブ検索広告」の2通りがあります。
- テキスト広告
-
- ショッピング広告
複数の商品の写真、値段、販売店、ユーザレビューなどが表示されます。
- ショッピング広告
-
- マルチメディア広告
デスクトップ、またはタブレットでの検索のみ、検索結果の右側に画像とテキストで表示されます。
ショッピング広告掲載時には、同時掲載されることはありません。
- マルチメディア広告
bing面において、Yahoo!広告との関係や出稿の違いは?
2025年5月現在、 Microsoft Bing面にはマイクロソフト広告とYahoo!広告のどちらも表示されます。
しかし、今後は徐々にYahoo!広告のインプレッションが減り(=マイクロソフト広告の比重が増え)、将来的にはマイクロソフト広告のみ配信予定となっています。
また、同じ広告主がYahoo!広告とマイクロソフト広告の両方からBingへ配信した場合、両方表示される可能性はありますが、競売は起きません。
両者では、配信できるコンテンツの内容にも違いがあります。
Yahoo!広告からbingへ配信できるのはテキスト広告のみですが、Microsoft広告からはショッピング広告や広告表示オプションを利用できます。
オーディエンス広告(ディスプレイ広告)
オーディエンス広告は、ページ内のコンテンツと同じようなフォーマットで、画像やテキストで表示される広告です。コンテンツに馴染んで、自然な形で広告を掲載できます。
主な配信面は、次のとおりです。
・Microsoft Edge:マイクロソフトが提供するウェブブラウザで、デフォルトの検索エンジンはBing
・msn:ニュース、天気、エンタメ情報などを提供するポータルサイト
・Outlook.com :マイクロソフトが提供する無料メールサービス
・LinkedIn: ビジネス特化型SNS
・Netfrix:世界の会員数3億人越え(2025年1月時点)のオンデマンドビデオストリーミングサービス
・その他提携サイト
Microsoft広告のメリット
Microsoft広告を活用するメリットについて、紹介します。
BtoB商材に強い
Microsoft広告は、BtoB商材に強みがあると言えます。
理由の1つとして、ビジネス特化型SNSであるLinkedInとの連携によって、詳細なターゲティングが可能なことが挙げられます。企業名や従事している業界、職種などの情報を利用したターゲティングにより、効率的なアプローチができます。
もう1つの理由として、ビジネスシーンにおけるMicrosoft製品のシェアが高いこと、が挙げられます。特に日本では、会社などビジネス用途ではMicrosoftのPCが支給されることが多いです。
その分、Microsoft製品でデフォルトの設定となる検索エンジン(Bing)や、メールサービス(outlook)をそのまま利用する人も多いです。
これらの理由から、Microsoft広告はITサービス、法人向けソフトウェア、ビジネスコンサルティング、人材サービス、オフィス機器、ビジネス研修・セミナーなどのBtoB商材に適していると言えます。
Bingへ広告配信ができる
Microsoft広告は、Microsoft社が提供する検索エンジン「Bing」の検索結果ページに広告を配信できます。
Bingは、世界中で利用されている主要な検索エンジンの1つであり、日本国内でも、PCにおけるBingの検索エンジンシェアは、Googleに次ぐ2位で17.76%を占めています。(2025年4月時点)
Bingへ広告を配信することで、より多くのユーザにアプローチできると言えるでしょう。
ショッピング広告の配信ができる
Microsoft広告では、ECサイトやオンラインショップの商品情報を視覚的に表示する、ショッピング広告の配信が可能です。
Google広告でもショッピング広告を配信できますが、Microsoft広告は、Googleショッピング広告と比較して競争率が低く、クリック単価も安く出稿できる可能性があります。
また、すでにGoogleショッピング広告を配信している場合、フィードのインポート機能を利用し、簡単にMicrosoft広告へ設定をインポートすることも可能です。
Google広告のキャンペーンをインポートできる
Microsoft広告では、既存のGoogle広告キャンペーンをインポートできます。この機能を活用することで、新たに1から広告を作成する手間を大幅に削減し、スムーズにMicrosoft広告を配信できます。
インポート機能では、キャンペーン構造、キーワード、入札額、広告文、最終URLなど、Google広告の設定情報の多くを引き継ぐことができます。
インポート機能を活用することで、Google広告ですでに最適化されたキャンペーン設定を効率的にMicrosoft広告に反映させることができるため、Microsoft広告の導入ハードルを大幅に下げることができます。
特に複数のキャンペーンや広告グループを運用している場合、この機能による工数削減効果は非常に大きいといえるでしょう。
独自の広告表示オプションを利用できる
Microsoft広告には、Google広告やYahoo!広告と共通の広告表示オプションのほか、独自の広告表示オプションが存在します。これらのオプションを活用することで、広告の視認性を高め、ユーザのアクションを促進し、コンバージョン率の向上が期待できます。
現在利用可能な広告表示オプションは次のとおりです。
▼広告表示オプション一覧
広告表示オプション | 利用可否 | |
YG共通 | サイトリンク表示オプション | ○ |
コールアウト表示オプション | ○ | |
構造化スニペット表示オプション | ○ | |
価格表示オプション | ○ | |
画像表示オプション | ○ | |
住所表示オプション | ○ | |
電話番号表示オプション | × | |
アプリリンク表示オプション | ○ | |
プロモーション表示オプション | ○ | |
レビュー表示オプション | ○ | |
フライヤー表示オプション | × | |
ビジネス表示オプション | ○ | |
Microsoft広告のみ | 行動喚起(CTA)表示オプション | ○ |
フィルターリンク表示オプション | ○ | |
動画表示オプション | ○ |
Microsoft広告のターゲティング
Microsoft広告では、広告を効果的に配信するための多様なターゲティングオプションが用意されています。
2025年4月現在、利用できるターゲティングは次のとおりです。
▼ターゲティング一覧
ターゲティング | 詳細 |
デモグラフィック | 年齢や性別 |
ロケーション | 国や地域、エリア |
デバイス | PC/モバイル/タブレット |
LinkedINプロフィール | 会社/業種/役職 |
リマーケティング | 過去にサイトを訪れたことがあるユーザ |
類似オーディエンス | リマーケティングリストに基づいて自動生成される、類似セグメント |
In-Market | 特定カテゴリ・商品やサービスの購入意向が高いユーザ |
カスタマーマッチ | アップロードしたメールアドレスから作成されるリスト |
ダイナミックリマーケティング | サイト(主にEC)で閲覧・検討・購入された商品に基づくユーザ |
インプレッションベース・リマーケティング | 検索広告、オーディエンス広告、ショッピング広告、ビデオ広告などに接触したユーザ |
カスタムオーディエンス | 顧客データを基に作成するリマーケティングリスト |
Microsoft広告の始め方
Microsoft広告を始める方法は、Microsoft広告内でキャンペーン等の作成をする方法と、Google広告やMeta広告からキャンペーンをインポートする方法があります。
今回は、インポートを行う前提で説明します。
Google広告のキャンペーンインポート
Google広告からMicrosoft広告へキャンペーンをインポートする際の手順は、次のとおりです。
①Microsoft広告の管理画面にログイン
②ツールバーから「インポート」を選択し、「Google広告からインポート」をクリック
③Googleアカウントにサインインし、インポートしたいGoogle広告アカウントを選択
④インポート設定をカスタマイズする場合、「高度なインポート」を選択し、インポートする項目や入札単価、入札戦略、予算、UETタグなどを調整
カスタマイズが不要な場合は、インポート名とスケジュールを設定し、「インポートの開始」をクリック
⑤インポートが完了後、内容の確認
Google広告をインポートする際の注意点
インポートの際、細かなインポート設定ができるため、状況に合わせて調整しましょう。
ここでは、注意しておきたい設定をピックアップして紹介します。
- 「新しくインポートされたキャンペーンを一時停止する」
インポート直後にキャンペーンが配信されないよう、有効にすると安心です。インポート後は、設定の確認や調整を行ってから配信することをおすすめします。 - 「サポートされていないターゲット設定を含むキャンペーンを一時停止する」
Google広告で設定されている地域やオーディエンスなどが、Microsoft広告と互換性がない場合、調整してから配信する必要があるため、有効にしておきましょう。
そのほか、Microsoft広告へインポートしてすぐは、Googleより掲載がされにくい傾向があるため、キーワードのマッチタイプを緩めて掲載されやすくすることも推奨されています。
Google広告からインポートされない項目
Google広告からMicrosoft広告へのインポート機能は非常に便利ですが、すべての設定項目がインポートできるわけではありません。
Microsoft広告でサポートされていない機能や、両プラットフォーム間で仕様が異なる項目については、インポートされなかったり、設定が変更されたりする場合があるため、注意が必要です。
インポートされない項目
・除外キーワードのマッチタイプ(部分一致のみ)
・自動化ルール、IP アドレスの除外
・請求情報
・コンバージョン目標
・ターゲティング(アフィニティ、アプリユーザ、顧客リスト、詳細なユーザ属性、Youtube訪問者)
Microsoft広告でサポートされていないものが選択されている場合インポートされない、または親要素がインポートされる項目
・購買意向の強いユーザ
・地域ターゲット
・広告配信(ネットワーク)
その他
・P-max(マーチャントセンターが存在する場合はショッピングキャンペーンとしてインポートされる、存在しない場合はDSAキャンペーンでインポートされる)
・CPA入札(CPC入札としてインポートされる)
インポート完了後には、必ず設定内容を確認し、必要な項目については手動で設定を追加・修正するようにしましょう。
また、初めてインポートを行う際は、テスト用のキャンペーンや少額の予算でインポートを試し、想定通りの設定になっているかを確認することをおすすめします。
Google広告フィードのインポート(ショッピング広告)
Microsoft広告でショッピング広告を配信するためには、「Microsoft マーチャントセンター」に商品カタログを登録する必要があります。
すでにGoogle ショッピング広告を運用している場合は、Google マーチャントセンターから商品フィードをインポートすることができます。
Google マーチャントセンターからMicrosoft マーチャントセンターへの商品フィードのインポート手順は次のとおりです。
①Bing Web マスターツールにログイン
②「Merchant Center」→「インポート」→「+新規インポート」からGoogleアカウントにログインし、画面の案内に従ってフィードをインポート
Google広告のフィード項目が、Microsoft広告のフィードとどのように対応しているかは、次の公式サイトをご確認ください。
どのような Google フィード ファイル属性を使用できますか?(Microsoft Advertising)
Meta広告のキャンペーンインポート
Microsoft広告では、Google広告だけでなく、Meta広告(旧Facebook広告)からもキャンペーン情報をインポートすることができます。
詳しい手順については、公式サイトをご確認ください。
メタ広告 からキャンペーンを直接インポートする(Microsoft Advertising)
メタ広告 からインポートできるもの(Microsoft Advertising)
Microsoft広告の入稿規定
Microsoft広告を配信する際には、「Microsoft Advertisingポリシー」に定められた入稿規定に従う必要があります。適切な入稿規定を理解し、広告審査の通過率を高め、スムーズに広告を配信できるようにしましょう。
検索広告、オーディエンス広告それぞれの入稿規定は次のとおりです。
検索広告の入稿規定
検索広告の配信方法は、レスポンシブ検索広告、動的検索広告、マルチメディア広告、ショッピング広告の4種類があり、それぞれで入稿規定が異なります。
※以前存在した配信方法である拡張テキスト広告は、2023年2月1日以降、新規作成や既存の広告を編集することができません。
入稿規定は次の表のとおりです。
配信方法 | テキスト種類 | MAX文字数(半角) | MAX本数 | 補足 |
レスポンシブ検索広告 | 広告見出し | 30文字 | 15本 (推奨 8本~10本以上) |
|
説明文 | 90文字 | 4本(推奨 2本以上) | ||
最終URL | 2048文字 | 1本 | ||
動的検索広告 | 説明文 | 2本 | ||
マルチメディア広告 | 短い見出し | 30文字 | 15本 (推奨 8本~10本以上) |
|
長い見出し | 90文字 | 5本 | ||
説明文 | 90文字 | 5本 | ||
会社名 | 25文字 | |||
画像 | 16枚(推奨 縦横比は4種類すべて入稿) | アスペクト比 1.91:1(必須)※703 x 368以上 1:1(必須)※470 x 470以上 1:2※470 x 940以上 4:1※608 x 152以上 |
||
ロゴ | 5本 | アスペクト比 1:1※128 x 128以上 4:1※512 x 128以上 |
オーディエンスネットワーク配信の入稿規定
オーディエンス広告(ディスプレイ広告)は、画像などの視覚的要素を含むため、画像の規格や品質が重要になってきます。
また、オーディエンス広告の画像は自動でトリミングされることもあるため、なるべく画像内にはテキストを入れないことや、メインビジュアルを中央寄りで作成することが推奨されています。
入稿規定は次の表のとおりです。
テキスト種類 | MAX文字数(半角) | MAX本数 | 補足 |
広告見出し | 30文字 | 15本 (推奨 8本~10本以上) |
|
長い広告見出し | 90文字 | 5本 | |
説明文 | 商品の説明 | 5本 | |
画像 | 商品の価格1~20枚(推奨 3枚以上) | 1~20枚(推奨 3枚以上) | アスペクト比 1.91:1(必須) ▼以下は任意(1.91:1が入っていれば自動トリミング) 1:1 2.01:1 2:1 1.69:1 1.53:1 1.24:1 1.2:1 |
ロゴ | 商品のメイン画像のURL | 5本 | GIF (アニメーションなし)、PNG、JPG、JPEG 600KB以内 |
Microsoft広告の事例
最後に、メディックスのお客様で、実際にMicrosoft広告で広告効果が改善された事例を紹介します。
こちらのお客様では、Google、Yahoo!広告と同程度のCTR、CPAを保ちつつ、CPCは1/3以下に抑えることに成功しています。
・業界:グループウェアベンダ
・背景:リード獲得
・CVポイント:資料DL、Web見積もり、資料請求、入会申込
まとめ
本記事では、Microsoft広告の特長や他媒体との違い、始め方などを説明しました。
Microsoft広告は、Google・Yahoo広告のようなメジャーな要素は兼ね備えつつ、独自の広告表示オプションやターゲティングで新たなユーザを発掘できる可能性があります。
すでに他媒体で広告を配信している場合、キャンペーンをインポートすることで初期設定の手間が省けるため、始めるハードルも低いです。
既存の広告との違いや共通部分をしっかり抑えて、Microsoft広告を活用しましょう。