テレビ番組の見逃し配信などを見るために多くの人が日常的に利用するTVerでは、番組コンテンツと一緒に広告動画を配信することが可能です。
動画コンテンツに掲載する広告としてはYouTube広告なども知られていますが、TVer広告にはどのような特長・違いがあるのでしょうか。
本記事では、TVer広告のメリットや広告の種類、Youtube広告との違いなどを解説します。
また、出稿方法や入稿規定なども紹介しているので、導入の参考にご利用下さい。
目次
TVer広告とは
TVer広告とは、無料の動画配信サービスTVerに広告動画を配信できるサービスです。
TVerで配信されているテレビ番組の再生前・途中・再生後にスキップ不可の動画広告を配信でき、従来のテレビCMに近い形での訴求を行えます。
TVerの保有するユーザデータに基づく詳細なターゲティングが可能で、データドリブンな運用ができるなど、テレビCMとは違ったメリットのあるサービスです。
TVerの特長
TVer広告について詳しく説明する前に、TVerとは一体どんなサービスで、どのようなユーザが利用しているのかを説明します。
TVerは、民放各局のテレビ番組を公式でインターネット配信している無料動画配信サービスです。
テレビ番組の放送終了後に、一定期間無料配信する「見逃し配信」や、放送開始と同時に視聴できる「リアルタイム配信」などのコンテンツがあり、民放5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)を中心に、750以上の様々な番組を視聴できます。
スマートフォンやタブレットのほか、インターネットと接続できるテレビ「コネクテッドTV」でも視聴でき、アプリの総ダウンロード数は7,800万超えと、多くのユーザが日常的にTVerを利用しています。
また、特定の層に偏らず幅広い年齢の男女に利用されていて、従来のテレビCMでは接触が難しかった(地上波テレビをリアルタイムで視聴しない)若年層にもリーチできる点も特長です。
出典:[TVer] 利用動向をまとめた「数字で見るTVer」初公開 | TVer INC.
TVer広告の強み・メリット
ほかの広告と比較したTVer広告のメリットとしては、次の5点が挙げられます。
・潜在層にアプローチできる
・長い動画もスキップ不可で配信できる
・完全視聴率が高い
・ブランドイメージの毀損リスクが低い
・高精度なターゲティングが可能
それぞれ詳しく解説します。
潜在層にアプローチできる
TVer広告は、商品・サービスへの関心度が低い段階にある「潜在層」へのアプローチに適しています。
例えば、検索広告のようにニーズが明確な「顕在層」に向けた広告は、リーチできるユーザ層が限定的で、自社について知らない層や、商品・サービスへの関心度が低い層などにリーチすることが難しいです。
TVerは、年齢層を問わず幅広い地域のユーザが利用しているため、自社について知らない層を含む潜在層に対して効率的にリーチでき、認知の獲得に有効です。
長い動画もスキップ不可で配信できる
TVer広告は、60秒という長時間の動画もスキップ不可で配信可能です。
TVer広告と同様にスキップ不可の動画広告としては、YouTubeの「バンパー広告」などもありますが、6秒という制限があり、1本の動画に含める情報量に限界があります。
その点、TVer広告では、最大60秒の動画広告をスキップ不可で配信でき、商品の特長などをしっかり説明することが可能です。
そのため、興味・関心、比較・検討段階にあるユーザのニーズをしっかり満たせるような、詳細な説明や段階的な構成の広告を配信できます。
完全視聴率が高い
TVer広告は、スキップできない仕様である上、ユーザが「自分のみたい番組」を能動的に見にいくため、本編を見るために広告を最後まで見る可能性が高いです。
TVerが公開しているデータによると、60秒の広告でも完全視聴率は93.4%で、ほとんどのユーザが動画広告を最後まで視聴しています。
YouTubeのインストリーム広告など、スキップ可能な動画広告の場合、「スキップされる前に興味を引く」「冒頭を見るだけでも重要なメッセージが伝わるようにする」などの工夫が求められ、伝えられる内容が限られる場合があります。
TVer広告はそもそもスキップ機能がないため、そのような「スキップを前提とした制作」を行う必要がなく、自由な表現が可能です。
ブランドイメージの毀損リスクが低い
TVer広告は、地上波放送と同等の厳しい基準で考査された動画コンテンツとともに広告が配信されるため、低品質な動画コンテンツに広告が配信されることによるブランドイメージの毀損リスクが低いです。
YouTubeやInstagramなどのソーシャルメディアの場合、個人を含め幅広いクリエイターが公開する動画コンテンツに広告が掲載されます。
そのため、不適切なコンテンツを配信している可能性のあるチャンネルをあらかじめ除外するなど、低品質な動画に広告が配信されないよう、注意して運用する必要があります。
この点TVer広告では、テレビ局が制作した高品質な番組しか配信していないため、ブランドの信頼性を損なうことなく、安心して広告を配信できるでしょう。
高精度なターゲティングが可能
TVer広告では、ユーザデータを活用した高精度なターゲティングが可能です。
ユーザがTVerに登録する際に入力した、性別・年齢などのデモグラフィック属性や興味関心、番組カテゴリーなど豊富なユーザデータを元に、自社の広告に興味を持つ可能性の高いユーザ層へ効果的に広告を配信できます。
従来のテレビCMはターゲティングが難しいとされていましたが、TVer広告では精度の高いターゲティングができ、広告の費用対効果を最適化できます。
TVer広告の種類
TVer広告には、次の2種類の配信面があります。
・インストリーム動画広告
・コンパニオン広告
それぞれの特長を詳しく見ていきましょう。
インストリーム動画広告
インストリーム動画広告は、テレビCMのように番組の再生前や途中・最後に挿入される動画広告です。
挿入される場所は3種類あり、掲載箇所は指定できません。
プレロール:番組の再生前
ミッドロール:番組の再生途中
ポストロール:番組の再生後
ミッドロールの広告が挿入されるタイミングは、自動ではなく手作業で決められています。
番組の内容に合わせて、「ユーザが不快に感じない」と考えられるタイミングを十分に検討した上で広告の挿入箇所が決定されるため、ユーザの視聴体験を損なうリスクを避けて配信することが可能です。
コンパニオン広告
コンパニオン広告は、次のようにインストリーム動画広告の下や隣に表示されるバナー広告です。
バナー画像だけでなく、「詳しくみる」などのテキスト付きのCTAボタンも設定できるため、クリックを促す事が可能です。
TVer広告のターゲティング
TVer広告では、大きく分けて次の3種類のターゲティングが可能です。
・属性
・アフィニティ(興味関心)
・コンテンツカテゴリ
それぞれのターゲティングで設定できる項目について解説します。
属性
TVer広告では、TVerの保有するデータ(ファーストパーティデータ)に基づいた「ユーザ属性」によるターゲティングが可能です。
設定できる項目は、次の3つです。
性別 | 男性・女性 |
年齢 | 1歳刻みで設定可能 |
住所 | 都道府県・市区町村を指定 |
アフィニティ(興味関心)
TVer広告では、「ユーザが興味関心を持っているテーマ」を基準としたターゲティング設定ができます。自社の商品・サービスと親和性の高いテーマを設定することで、広告の配信効果を高めることが可能です。
旅行やショッピング・ファッション、ヘルスケア、ペットなど全17種類の興味関心から選ぶことができます。
コンテンツカテゴリ
TVer広告では、広告を掲載する「番組のカテゴリ」を指定することによってもターゲティングを行えます。
ターゲットとするユーザが視聴しそうな番組のカテゴリを指定することで、広告の配信効果を高めることが可能です。
指定できる項目は次の表のとおりで、メインカテゴリに加えて、さらに細かく分類された36のサブカテゴリから指定できます。
メインカテゴリ | バラエティ/ドラマ/報道・ドキュメンタリー/アニメ/スポーツ |
サブカテゴリ | 恋愛/サスペンス/ヒューマン/医療/刑事/学園/青春/コメディ/スポーツ/ファミリー/ミステリー/ホラー/時代劇/ビジネス/ファンタジー・SF/旅行・街ブラ/トーク・スタジオバラエティ/お笑い・漫才・コント/生活情報/グルメ/クイズ/音楽/報道/ドキュメンタリー/キッズ/ゴルフ/釣り/サッカー/野球/ラグビー/eSports・ゲーム/格闘技/動物/健康 |
広告を配信したいカテゴリを指定するだけでなく、配信したくないカテゴリを指定する除外設定も可能です。
TVer広告の費用・課金形式
TVer広告を利用するには、どの程度の費用がかかるのでしょうか。
後述するとおり契約方法はいくつかありますが、広告代理店経由で契約する場合、最低出稿金額など詳細は代理店によって異なります。詳しい費用については、代理店へ問い合わせましょう。
課金形式については次の2種類があり、それぞれ課金の発生するタイミングや単価が異なるため、確認しておきましょう。
CPM課金(固定単価形式) | CPCV課金(オークション形式) | |
課金タイミング | 広告の表示開始時 | 広告の完全視聴 |
単価 | CPM(広告の1000回表示)固定単価 | オークションにより変動 |
メリット | ・固定単価のため費用が分かりやすい ・CPCV(オークション)より優先して買い付けされる |
・最後まで広告が視聴されない限り課金が発生しない ・オークション市場に応じて単価が変動する |
デメリット | ユーザが広告の途中で離脱した場合にも課金が発生する | CPMより買い付け優先度が下がる |
TVer広告の出稿方法
代理店経由
TVer広告を出稿する際は、TVer広告に対応している広告代理店経由で出稿することになります。
代理店は、TVerの担当者に運用を任せる「フルマネージド」と、自社で運用を行う「セルフサーブ」の2つのプランから選べます。
両プランの違いの詳細は次のとおりです。
フルマネージド | セルフサーブ | |
運用方法 | TVerの担当者が運用 | 自社の担当者が運用 |
最低出稿金額 | 50万円~ | なし |
入札単価 | 入稿時に設定し、出稿中の調整不可 | オークション形式で決定 |
フルマネージドプランは、入札金額の調整やターゲティング設定など、運用に必要な業務をTVerの担当者に任せられるため、代理店側の負担が軽いことがメリットです。
ただし、最低出向金額が決まっているため、一定以上の予算を確保する必要があります。
DSP経由
また、DSPを経由して、TVerに広告を配信できることがあります。
DSPとは、「デマンドサイドプラットフォーム:Demand Side Platform」の略で、幅広い広告枠への掲載を一括管理し、広告配信の全般を自動化・効率化できるサービスのことです。
DSPについて、詳しくは次の記事もご参照ください。
【5分で分かる】DSPとは?仕組みや代表的なツールを紹介
DSPの中には、配信面の1つとしてTVer広告に対応していることがあり、ほかの広告の配信面と併せて一括で運用することが可能です。(例:FreakOut、Supership)
DSPでは独自のターゲティングを利用できることもあり、複数の広告を横断的に管理できるなど、ほかの出稿方法とは違ったメリットがあります。
TVer広告の入稿規定
TVer広告にはどのような動画を入稿できるのでしょうか。
「インストリーム動画広告」に入稿できる動画と、「コンパニオン広告」に入稿できるバナー画像・テキストの入稿規定をそれぞれ紹介します。
インストリーム動画広告の入稿規定
ハイレート (モバイル/PC) |
プレミアムレート (コネクテッドTV) |
|
時間 | 6秒~60秒 (※) | |
ファイル形式 | MP4 | |
ビデオサイズ(W×H) | 1280 × 720px | 1920 × 1080px |
映像フォーマット | YUV420 | |
映像アスペクト比 | 16:9 | |
映像ビットレート | 1,500 ~ 2,100kbps | 2,500 ~ 4,000kbps |
映像フレームレート | 29.97fps | |
音声タイプ | ステレオ(モノラルは疑似ステレオ) | |
音声コーデック | AAC-LC | |
音声ビットレート | 64・128・192kbps(推奨は192kbps) | |
音声サンプリング周波数 | 44.1・48kHz(推奨は48kHz) | |
総ファイルサイズ | 12MB以内 (15秒素材は6MB推奨) |
18MB以内 (15秒素材は9MB推奨) |
※6秒~60秒の範囲を超える動画については要相談
上記の「プレミアムレート」の大きいサイズの動画を入稿することで、モバイルなど小さい画面にも自動的にリサイズされて、すべてのデバイスに向けて広告を配信できます。
上記の表は入稿規定の一部です。詳しくは公式サイトをご参照下さい。
出典:TVer広告の広告入稿規定についてはこちら|TVer公式サイト
コンパニオン広告の入稿規定
【コンパニオンSDバナー】
データ形式 | PNG |
容量 | 150KB以内 |
サイズ (W×H) | 600 x 120px |
アニメーション | 不可 |
URL | 必須(httpsのみ可) |
表現 | ・クリエイティブの縁を囲う表現は不可 ・文字表現はクリエイティブ全体の30%以下まで。(ロゴは含めず) ・文字のみのクリエイティブ不可 ・黒背景+文字のバナーは不可 (コンテンツと混同する可能性があるため) |
【コンパニオン広告 SD バナー+テキスト(+ボタン)】
データ形式 | PNG |
容量 | 150KB以内 |
サイズ (W×H) | 512 x 512px |
アニメーション | 不可 |
URL | 必須 (httpsのみ可) |
文字数 | 25文字まで |
ボタン文字 | 「詳しくみる」「詳細こちら」「ダウンロード」「チェック」「無料体験」「相談受付中」「資料請求」「予約こちら」「購入こちら」「今すぐ購入」から選択可能 |
【コンパニオン広告 SD テキスト(+ボタン)】
クリックURL | 必須 (httpsのみ可) |
文字数 | 25文字まで |
ボタン文字 | 「詳しくみる」「詳細こちら」「ダウンロード」「チェック」「無料体験」「相談受付中」「資料請求」「予約こちら」「購入こちら」「今すぐ購入」から選択可能 |
これら3種類のコンパニオン広告に共通で、次に該当するものは入稿できません。
・公式に権利を持たないキャラクターや商標、番組タイトル等を利用し、あたかも「公式」サイトのように見せかけ誘引を促すもの。
・そのほか、運営側が掲載不可と判断するもの。
また、広告クリック後の遷移先(ランディングページ)についても審査があり、内容が不適切と判断されると遷移先のURLとして設定できません。
表は入稿既定の一部です。詳しくは公式サイトをご参照下さい。
出典:TVer広告の広告入稿規定についてはこちら|TVer公式サイト
Youtube広告との違い
TVerと同じく、動画プラットフォームであるYoutubeでも動画広告を配信できるため、両者の違いを知りたい方も多いのではないでしょうか。
TVerとYoutubeのどちらで配信すべきかは、プロモーションの目的によって異なります。
各プラットフォームの特長を簡単にまとめると次のようになります。
- Youtube
インプレッション、クリック、コンバージョン、視聴などの指標に応じた入札戦略があります。
そのため、動画広告で獲得も重視したい場合はYoutubeでの配信がおすすめです。Youtube広告について、詳しく知りたい方は、次の記事もご参考下さい。
【2025年最新】Youtube広告とは?6種類の広告フォーマットや出し方を解説 - TVer
Youtubeのような入札戦略はありません。
スキップ不可な点やブランドセーフティ、コンテンツの安全性などから、ブランディングをより重視する場合はTVerでの配信をおすすめします。
それぞれの特長と自社の広告目標やプロモーションの目的を照らし合わせて、最適なプラットフォームを選択しましょう。
TVer広告についてよくある疑問
TVer広告を配信するにあたり、気になる方も多いであろう項目について説明します。
配信する番組の指定はできる?
通常のテレビCMでは、広告を配信する番組を指定できるのが一般的ですが、TVer広告では基本的に、具体的な番組を指定するターゲティングはできません。
基本的には本記事のコンテンツカテゴリで紹介したメインカテゴリ・サブカテゴリによるターゲティングによって、配信する番組の方向性を指定します。
ただし、出稿方法で解説したとおり、DSPによっては独自のターゲティングを利用でき、番組も指定できる場合があります。
広告をスキップ・ブロックされることはある?
TVerには、YouTubeなどにある「広告をスキップ」の機能がないため、通常は広告動画がスキップされることはありません。
また、TVerは利用規約で、広告ブロックアプリなどを使って広告を無効化することを禁止しています。
まとめ
幅広いユーザが日常的に利用する無料の動画配信サービス「TVer」に配信できるTVer広告は、潜在層やテレビ離れをしている若年層に対して効率的にリーチできる広告媒体です。
スキップ機能がなく、番組コンテンツ本編を見るために能動的に利用しているユーザが多いため、完全視聴率が高いというメリットもあります。
また、テレビ局が制作した高品質な番組に広告を掲載できるため、ブランドイメージの毀損リスクが低いことも特長です。
本記事を参考に、自社に合った出稿方法や動画広告プラットフォームを選びましょう。