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はじめに
現在、多くの企業がWeb解析のスタンダードとしてGoogle アナリティクス 4(GA4)を利用しています。しかし、日々の運用の中で「管理画面(UI)のレポートだけでは、本当に知りたいことが見えてこない」と感じることはないでしょうか。
GA4の管理画面は、決まった指標を素早く確認するには便利ですが、あくまで「Googleが決めた定義」の中での分析に限られます。自社のビジネスモデルに深く踏み込んだ分析や、外部データを組み合わせた高度な効果検証を行うには、GA4のデータをBigQuery(データウェアハウス)へ連携し、活用することが不可欠です。
本記事では、マーケターが成果を出すための武器として、BigQueryを活用する意義と具体的なメリットについて解説します。
「SQL」で実現する自由な分析
GA4の標準レポートを見ていて、「もっと細かい条件で絞り込みたいのに」「この数値の定義、ウチのビジネスとは少し違うな」と感じる場面はないでしょうか。
BigQuery導入の最大の価値の一つは、そうした「管理画面の制約」を突破できることにあります。というのも、BigQueryでは、GA4のローデータ(生データ)に対し、SQLという言語を操作して「集計のルール(定義)」を自由に作成することができるため、これを用いることにより「自社の顧客にとって意味のある定義」でデータを分析することが可能となるのです。
具体的にSQLを用いることでどのような分析が可能となるのか、ECサイトを例に2つの分析活用例を紹介します。
1,検討期間のリードタイム分析
「初回訪問から購入まで、ユーザーはどれくらいの時間をかけているのか?」
この問いに対し、GA4の標準機能だけで正確に答えることは困難です。標準機能でも日数の概算は出せますが、詳細な粒度での分析には向きません。
BigQueryであれば、ユーザーごとに「初回訪問の日時」と「購入の日時」の差分を正確に計算し、分布を可視化することができます。
<例>
購入が発生したユーザーを、
• 即決層(当日購入)
• 短期検討層(7日以内)
• 中期検討層(8日から29日)
• 長期検討層(30日以上)
の4種類に分類して、ユーザーが購買に至るまでの期間の傾向を把握したい。
SQL
出力結果
このように顧客を分類することで、「即決層が多いのでクーポン施策をさらに強化する」「長期検討層を増やすためにステップメールで商品の魅力を啓蒙する」といった、検討フェーズに合わせた具体的な施策が立案できるようになります。
2,商品同士のバスケット分析
GA4の「eコマース購入」レポートでは、「商品Aが何個売れたか」「商品Bの収益はいくらか」という個別の成績は分かります。 しかし、「商品Aを買った人は、同時に商品Bを買う傾向が強い」という商品間の組み合わせ(相関関係)までは簡単には出せません。
BigQueryを使えば、1回の決済(トランザクション)の中に含まれる商品データを解析し、「一緒に買われやすい商品の組み合わせ」を抽出できます。
<例>
全ての注文データを総当たりでチェックし、セット購入が多い組み合わせトップ10を抽出したい。
SQL
出力結果
この結果をもとに、商品詳細ページで「よく一緒に購入されている商品」としてレコメンド表示を行ったり、セット商品としてパッケージ販売を行ったりすることで、客単価の向上を狙うことができます。
「データ統合」で見える真のROI
Webサイト上の行動データ(GA4)は、顧客接点のあくまで「一部」に過ぎません。ビジネス全体の成果を判断するには、GA4の外にある情報と照らし合わせることが不可欠です。
そうした場面においても役立つのがBigQueryです。BigQueryを「データ統合ハブ」として活用することで、広告データや販売管理データなどの分断されたデータを繋ぎ合わせることができ、より経営視点に近い分析が可能となるのです。
1,広告コストデータとの統合による「ROAS」の一元管理
Webマーケティングでは、Google広告以外にも、Yahoo!広告、Meta(Facebook/Instagram)、LINE広告など複数の媒体を運用することが一般的です。しかし、GA4にはGoogle以外の広告コストは自動では連携されません。
BigQuery上で、各媒体の「コストデータ」と、GA4の「セッション・コンバージョンデータ」を突き合わせることで、媒体横断でのCPA(獲得単価)やROAS(広告費用対効果)を一つのダッシュボードでモニタリングできるようになります。
「どの媒体が最も効率よく売上に貢献しているか」を同じ基準で評価することで、予算配分の最適化が迅速に行えるようになります。
2,オフラインデータとの連携による「実利」の可視化
ECサイトなどでは、Web上で「注文完了(コンバージョン)」となっても、その後に「キャンセル」や「返品」が発生することがあります。GA4上の数値だけを追っていると、これらが考慮されず、実際の売上と乖離してしまうケースがあります。
BigQueryにおいて、GA4のトランザクションIDや会員IDをキーとして、基幹システム(販売管理システム、など)のデータと連携させれば、以下のような分析が可能になります。
• キャンセル・返品を除外した「確定売上」での成果計測
• Web上の行動と、店舗での購入履歴を紐づけたLTV(顧客生涯価値)分析
「見かけのCV数」ではなく、「実際の利益」に基づいてマーケティング施策を評価できることこそ、データ統合の最大の価値と言えます。
広告・GA4・基幹データをBigQueryで統合し、lookerstudioで描画したダッシュード

まとめ
GA4は強力なツールですが、ビジネスの成果を最大化するうえではどうしても不十分な場面が出てきます。
• 「自社のビジネスモデルに即した自由な定義で分析したい」
• 「広告費や確定売上と紐づけて、正しい投資対効果を見たい」
こうしたニーズに応えるのがBigQueryです。BigQueryでデータを加工・統合し、分析の環境を整えることは、単なる業務効率化にとどまらず、データに基づいた迅速で正確な意思決定を行うための強力な武器となります。
まずは「今、見えていないデータは何か」「もっとこう分析できれば施策が変わるのに」という現場の悩みから、BigQueryの活用を検討してみてはいかがでしょうか。