Spotify広告を利用すると、デジタル音楽・音声配信サービスSpotify(スポティファイ)で音声広告などを配信できます。
本記事では、Spotify広告の導入を検討している初心者向けに、Spotify広告の基本的な特長などを解説します。
ほかの媒体と比較したメリットや出稿方法、実際の広告事例などを詳しく見ていきましょう。
目次
Spotify(スポティファイ)とは
Spotifyは豊富な音楽・ポッドキャストなどを楽しめる、世界的に人気の高いデジタル音楽・音声配信サービスです。
日本国内においても多くのユーザが利用しており、日本で最も利用されているデジタル音声プラットフォーム(※)として知られています。
ユーザ層は若年層から45歳以上まで幅広く、性別も男女の偏りなく利用されています。特にZ世代のユーザ数が急成長しているサービスです。
Spotify広告とは
Spotify広告は、Spotifyで配信されている音楽・ポッドキャストの合間に配信する音声広告を配信できるサービスです。
さらに、音声広告だけではなく、再生中の画面に表示させるバナー広告・動画広告など、ユーザが画面を見ている時に視覚的な訴求ができる配信面も用意されています。
Spotify広告は、広告代理店を通して入稿する方法のほかに、「広告マネージャー」を使って自社で入稿・運用することも可能です。
Spotify広告のメリット
Spotify広告のメリット・強みとしては、次の3点が挙げられます。
- 「ながら聞き」のユーザにリーチできる
- 詳細なターゲティングが可能
- 効果の計測・分析が可能
それぞれ詳しく解説します。
「ながら聞き」のユーザにリーチできる
Spotify広告では、通勤・家事などのシーンで音楽・ポッドキャストを聞く、「ながら聞き」のユーザにリーチできます。
「ながら聞き」のシーンでは、ユーザは基本的に画面を見ないため、画像や映像による「視覚」への訴求ができません。
SNS広告やリスティング広告など、ユーザが「画面を見ている時」に訴求できる広告は多くありますが、「画面を見ていない時」にもアプローチできる広告として、Spotify広告が注目されています。
詳細なターゲティングが可能
Spotify広告では、詳細なターゲティングによって効率的な配信が可能です。
年齢・地域などのデモグラフィック属性に加えて、「どのアーティストのファンか」「どんなポッドキャストを聞いているか」といった音楽配信サービスならではのターゲティングを利用できます。
Spotify広告のターゲティングについて、詳しくは後ほど解説します。
効果の計測・分析が可能
Spotify広告は、これまでのラジオ広告などと違い、詳しい効果計測・分析が可能です。
広告のインプレッション数・クリック数といった基本項目だけでなく、ブランドの認知度・好感度への影響を示す「反響」や、広告を聞いた後の来店・購入などのアクションを測定する「反応」など、様々な分析データが提供されます。
広告主は、提供されるデータを広告クリエイティブの最適化や、マーケティング戦略の改善などに活かすことができます。
Spotify広告のフォーマットの種類
Spotify広告には、音声・動画・ディスプレイ・その他の4種類のフォーマットがあり、その中に様々な配信メニューがあります。
広告フォーマットとメニューの種類は、次のとおりです。
音声 | オーディオ |
オーディオ+キャンバス | |
オーディオ+CTAカード | |
ポッドキャスト広告 | |
動画 | ビデオテイクオーバー |
スポンサードセッション | |
オプトインビデオ | |
ディスプレイ | モバイルオーバーレイ |
デスクトップオーバーレイ | |
リーダーボード | |
インフィードディスプレイ | |
スポンサーシップほか特別製品 | ブランドプレイリスト |
スポンサードプレイリスト | |
The Stage | |
ホームページテイクオーバー | |
ファーストインストリーム | |
ヘッドライナー |
それぞれの特長を詳しく解説します。
音声
Spotify広告の代表的な広告フォーマットは、音楽・ポッドキャスト再生の合間に配信される「音声広告」です。
音声に加えて、画面上には「バナー画像」や「動画」も配信されます。
音声広告で利用できる広告メニューは次の4種類です。
広告フォーマットの種類 | 概要 |
オーディオ | 音楽再生の合間に配信される音声広告。画面にはバナー画像(コンパニオンバナー)が表示される。 |
オーディオ+キャンバス | 音楽再生の合間に配信される音声と静止画、もしくは無音のループ動画を組み合わせた広告。 |
オーディオ+CTAカード | 音声広告に接触したことがあるユーザに対して、最大7日間配信されるCTA付きのディスプレイ広告。 |
ポッドキャスト広告 | Spotifyや外部のストリーミングサービスのポッドキャスト内に配信される音声広告。 |
動画
Spotify広告では、動画広告の配信も可能です。具体的には次のようなフォーマットがあります。
広告フォーマットの種類 | 概要 |
ビデオテイクオーバー | 楽曲の合間に、ユーザが画面を見ていることが確認できた際に配信される動画広告。 |
スポンサードセッション | 視聴後に「広告が表示されない30分間」を提供する動画広告。動画視聴の完了時に外部サイトに誘導できる。 |
オプトインビデオ | Spotifyアプリを使用しているユーザが音楽を再生している際に、画面を見ていることが確認できる場合に表示される動画広告。 |
ディスプレイ
ディスプレイ広告は、モバイル・デスクトップ版Spotifyアプリの様々な場所に表示されるバナー広告です。次の4種類のフォーマットがあります。
広告フォーマットの種類 | 概要 |
モバイルオーバーレイ | ユーザがモバイル版のSpotifyアプリを開いた際に全画面で表示されるバナー広告。 |
デスクトップオーバーレイ | ユーザがデスクトップ版のSpotifyアプリを開いた際に表示される大型バナー広告と、続いて画面の一部に表示される横長のバナー広告。 |
リーダーボード | デスクトップ版ユーザの画面の一部に30秒間表示されるバナー広告。 |
インフィードディスプレイ | モバイル版のSpotifyアプリで音楽の再生中、もしくは検索ページに配信されるバナー広告。 |
スポンサーシップほか特別製品
Spotify広告ではほかにも、スポンサーしたプレイリスト上に広告を表示するなど、上記以外にも様々な広告製品が用意されています。具体例は次のとおりです。
広告フォーマットの種類 | 概要 |
ブランドプレイリスト | ブランドの世界観を表現する独自のプレイリストを作成・配信する。 |
スポンサードプレイリスト | 自社ブランドと親和性の高いアーティストのプレイリストなど、スポンサーしたプレイリスト上にロゴを掲載するなどして自社ブランドの露出を行う。 |
The Stage | Spotifyアプリ上で様々な広告体験を柔軟にカスタマイズして提供する。(例:広告に接触したユーザが参加ボタンをクリックするとプレイリストが生成され、ユーザのライブラリに保存される) |
ホームページテイクオーバー | Spotifyホーム画面のファーストビューに24時間表示する動画もしくは静止画の広告(ベータ版) |
ファーストインストリーム | インストリーム広告のファーストビューを24時間独占する。(ベータ版) |
マルチフォーマットヘッドライナー | 純広告限定の、1日集中で広告を配信するパッケージ。 |
Spotify広告のターゲティングの種類
Spotify広告では、大きく分けて次の6種類のターゲティングを設定できます。
- デモグラフィック
- デバイスと接続方法
- 聴取行動
- 関心事予測
- プラットフォーム外活動
- 広告への反応履歴
ただし、配信手法や広告フォーマットによって利用できるターゲティングの種類が異なり、必ずしも全てを利用できるとは限らない点に注意が必要です。
6つのターゲティングについて、詳しく解説します。
デモグラフィック
ユーザの属性情報によるターゲティングが可能です。
次のような項目を指定できます。
・年齢
・性別
・エリア(国・都道府県など)
・言語
デバイスと接続方法
ユーザが使用するデバイスや、キャリアなど接続方法についてのターゲティングが可能です。
次のような項目を指定できます。
・In-Car(自動車を利用中のユーザ)
・プラットフォーム(デスクトップ/モバイル/タブレット)
・OS(iOS/Android)
・キャリア(携帯電話事業者)
聴取行動
Spotifyのサービスの特長を活かした項目として、どんな音楽・ポッドキャストを聞いたことがあるか、もしくは現在聞いているかという「聴取行動」を基準としたターゲティングが可能です。
次のような項目を指定できます。
・音楽のジャンル
・プレイリスト・ポッドキャストのカテゴリー
アフィニティ
アフィニティ(ユーザの興味関心・ライフスタイル)を基準とするターゲティングが可能です。
設定できる項目は配信手法によって異なりますが、広告マネージャーでは次のような項目を指定できます。
・学問への興味
・スポーツ
・人文科学・歴史
・アメリカンフットボール
・医療と健康
こちらはあくまでも一例で、ほかにも様々な興味関心・ライフスタイルの項目を設定できます。
また、音楽配信サービスSpotifyならではの項目として、「どのアーティストのファンか」を基準にしたターゲティングも可能です。
プラットフォーム外活動
Spotifyプラットフォーム上でのユーザ行動だけでなく、外部サービスを利用しているときの行動データを元にしたターゲティングが可能です。
自社の顧客データを利用して「カスタムオーディエンス」を設定することで、例えば、自社のECサイトにアクセスしたことがあるユーザに絞って広告を配信することができます。
また外部サービスが収集したユーザ情報(サードパーティデータ)を活用した興味関心ターゲティングも可能です。
広告への反応履歴
Spotifyで配信した広告に対して、ユーザがどのような反応をしたかなどの反応履歴データを利用したターゲティング(広告エンゲージメントによるターゲティング)が可能です。
例えば、音声広告を最後まで再生する割合(聴取完了率)の高いユーザに絞って広告を配信したり、音声広告を配信したユーザに対して動画広告・ディスプレイ広告でさらに訴求する「リターゲティング」をしたりと、Spotify独自のターゲティングができます。
Spotify広告の配信手法
Spotify広告には次の3種類の配信手法があり、戦略・ニーズに応じて選択できます。
- 純広告(予約型)
- 広告マネージャー(運用型)
- プログラマティック広告(予約型・運用型)
それぞれ詳しく解説します。
純広告(予約型)
純広告は、広告を掲載する枠を固定価格で事前に買い取る予約型の配信手法です。
最低出稿金額が決まっていて初期費用がかかりますが、いつ・どこに掲載するかを確実に指定できます。
純広告で配信できる広告フォーマットは次のとおりです。
・マルチフォーマットヘッドライナー
・スポンサードプレイリスト
広告マネージャー(運用型)
Spotifyの広告マネージャーである「Ad Studio」を利用し、広告主がアカウントの開設から配信までを行う運用型の配信手法もあります。
広告マネージャーを利用すると、広告主は代理店を介さずに、目標設定・ターゲティング・クリエイティブ制作・広告出稿・効果測定までを自社で行うことが可能です。
こちらも純広告と同様に最低出向金額がありますが、料金が固定ではなくオークション(入札)形式で単価が変動する点が異なります。
広告マネージャーで配信できる広告フォーマットは次のとおりです。
・オーディオ
・オーディオ+CTAカード
・オーディオ+キャンバス
・ビデオテイクオーバー
・オプトインビデオ
・インフィードディスプレイ
・ホームページテイクオーバー
・ファーストインストリーム
プログラマティック広告(予約型・運用型)
プログラマティック広告は、自動プログラムによって広告枠の買い付け・配信を自動化する配信手法です。
事前に設定した「予算」や「ターゲット設定」などを基準にして、自動的に広告枠を購入します。
プログラマティック広告には次の2種類の出稿方法があります。
出稿方法 | 特長 |
PMP(プライベートオークション) | 限定された広告主を対象とする運用型の購入方法。最低出稿金額なし。 |
PG(在庫保証型) | 出稿額・日数・インプレッション数などをあらかじめ指定する予約型の購入方法。最低出稿金額あり。 |
出典:Spotifyプログラマティック広告の強みがよくわかる10の質問
プログラマティック広告で配信できる広告フォーマットは次のとおりです。
・オーディオ
・ビデオテイクオーバー
・スポンサードセッション
・モバイルオーバーレイ
・デスクトップオーバーレイ
・リーダーボード
Spotify広告の出稿方法
Spotify広告に出稿する方法として、次の2種類があります。
・広告主が直接配信する
・認定代理店を経由して配信する
それぞれの具体的な方法・違いを詳しく解説します。
広告主が直接配信する
前述の「広告マネージャー」を利用すると、広告主は代理店を介さずに広告を直接配信できます。
以前のSpotify広告は代理店などを経由しなければ広告を出稿できませんでしたが、2025年4月より変更され、Spotifyのアカウントがあれば誰でも広告を出稿できるようになりました。
直接配信するメリットは、代理店などの仲介業者に支払う手数料や、代理店と連携する手間などのコストを抑えられる点です。
ただし、適切に運用するには、クリエイティブ制作やターゲティングについての知識・ノウハウが求められます。
ノウハウの面で不安がある場合には、次に紹介する「認定代理店経由での配信」がおすすめです。
認定代理店を経由して配信する
「純広告」「プログラマティック広告」を利用する場合、Spotifyが認定した広告代理店に依頼して広告を配信します。
広告代理店を経由するメリットは、クリエイティブ制作や各種設定のサポートを受けられる点です。
Spotify広告に限らないマーケティング全般のコンサルティングを提供している代理店もあり、幅広いサポートを受けられます。
実際のSpotify広告の例
Spotify広告では、実際にどのような広告が配信されているのでしょうか。
Spotifyでは優れた音声広告を表彰する「Spotify Hits」を開催し、受賞作品をインターネット上に公開しているので参考にしてみましょう。
例えば、「Spotify Hits2024」の受賞作品の1つに、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社の和風チキンカツバーガー(通称:和カツ)の音声広告があります。「高須クリニック」と「和カツ食いに行く」を音声で聞くと似ていることを利用した、インパクトのある音声広告です。
広告の音源は公式サイトで公開されています。
Spotify広告の導入企業の参考事例
実際の企業では、Spotify広告を導入してどのような成果を得ているのでしょうか。
公式サイトに公開されている事例から、次の2つを紹介します。
・三井住友カード
・ニュートロジーナ
三井住友カード
三井住友カード株式会社では、ブランドの認知度向上とサービス理解促進のために、Spotify広告を導入しました。
「若年層」「女性ユーザ」を基本ターゲットとして、さらに細かいペルソナを設定。
例えば、「流行り物に敏感なトレンドパーソン」には音楽調、「普段からSpotifyのポッドキャストを聴いているようなナレッジパーソン」にはラジオ調といった、ペルソナごとに異なる広告クリエイティブを制作・配信しました。
結果、ブランドに対する好意・利用意向・推奨意向などを高めることに成功し、目標達成を実現しています。
出典:三井住友カード: 顧客視点のコミュニケーション設計とSpotify専用クリエイティブでユーザーのアクションを促進 | Spotify Advertising
ニュートロジーナ
スキンケア商品ブランドのニュートロジーナでは、リニューアルしたニキビケア商品の独自性を強調し、認知度・購入意欲を向上させるためにSpotifyを導入しました。
ターゲットとするミレニアル世代・様々な文化的背景を持つ消費者に響くように、「明るい女性の音声」を使った広告を配信。またディスプレイ広告も活用して、「クリアで健康的な肌をより印象的に」というメッセージを発信しました。
結果、ブランド認知度を+12%(12ポイント)、商品の購入意欲を+13%(13ポイント)高めることに成功しています。
出典:Spotify広告活用事例:ニュートロジーナ | Spotify Advertising
Spotify広告についてよくある疑問
最後に、Spotify広告の導入を検討する際によくある3つの疑問について解説します。
・広告の出稿料金・値段はいくら?
・広告がスキップされることはある?
・有料プランのユーザにはリーチできない?
広告の出稿料金・値段はいくら?
広告の具体的な出稿料金・値段は非公開で、代理店などに問い合わせて確認する必要があります。
弊社メディックスでも、料金等のお問い合わせに対応しています。
広告がスキップされることはある?
Spotifyの無料プランでは、広告をスキップすることはできません。
広告が煩わしいと感じるユーザは、有料プランに登録する必要があります。
そのため、最後まで広告を再生してもらいやすい点が、Spotify広告のメリットでもあります。
有料プランのユーザにはリーチできない?
Spotifyの有料プランユーザには基本的に広告が表示されませんが、ポッドキャスト広告など、一部の広告メニューでは有料プランのユーザにもリーチ可能です。
まとめ
Spotify広告は、「ユーザが画面を見ていないシーン」にもアプローチできる点が大きな強みです。
Spotify広告は「広告マネージャー」を使った自社運用も可能ですが、配信できる広告の種類や設定できるターゲティング項目など、特長を十分に把握した上で運用する必要があります。
自社での運用に不安がある場合には、代理店などのサポートを受けて出稿するのがおすすめです。