課題
- サイトやリージョンごとに計測ルールやイベント設計が統一されず、指標の捉え方にばらつきがあり、データ分析がサイロ化していた
- GA4移行により計測設定やタグ管理が複雑化し、正しいデータを継続的に取得できているか不安があった
- 分析結果を共有する環境が整っておらず、全社が同じデータ・同じ基準で分析し、知見を共有することができていなかった
効果
- GA4プロパティ構成の見直し・統合など計測環境全体の整備により、データ取得の信頼性が大きく向上した
- 共通の指標で同じ前提に立って議論できるようになり、データに基づく意思決定のスピードと精度が向上した
- ダッシュボード導入により統合的なレポーティングが可能になり、部門を越えてデータを共有・活用できる環境が整った
株式会社ワコム(以下、ワコム)は、ペンタブレットおよび液晶ペンタブレットのリーディングブランドとして、プロのクリエイターから一般ユーザー、教育現場に至るまで、幅広く支持を集めてきました。直感的で高精度な描画体験を可能にする独自技術を強みに、ハードウェアにとどまらず、デジタルインクやソフトウェアなどの領域でも存在感を発揮しています。欧州や北米、アジアへとグローバルに事業を展開し、デジタルクリエイティブ領域を牽引する日本発のブランドとして、さらなる成長が期待されています。
お話を伺った方
株式会社ワコム
クリエイティブエクスペリエンスユニット セントラルマーケティング
シニアディレクター
上田 菜美氏
株式会社ワコム
クリエイティブエクスペリエンスユニット セントラルマーケティング
品玉 みやび氏
テクノロジーの進展・普及に伴い、デジタルクリエイティブ市場は急速な進化を続けています。デザインや映像制作などの専門領域では、より高度な表現力や生産性が求められる一方、趣味や自己表現、教育といった分野でも創作を楽しむ人が増え、ユーザー層は大きく広がっています。こうした変化を捉え、より的確な施策につなげるため、ワコムでは戦略的なデータ活用を促進してきました。その基盤整備の一環として、メディックスの支援のもとWebサイトにおけるデータの計測基盤の整理・最適化に取り組みました。その背景や取り組みの成果、今後の展望について、全社のマーケティング戦略を統括する上田菜美氏、品玉みやび氏にお話を伺いました。

プロフェッショナル領域で培った強みを活かし、グローバルブランドへ
― ワコムの事業やミッションについてお話ください。
ワコムは1983年の創業以来、40年以上にわたり、「直感的で自然なデジタル表現手段を通じて、世界中の人々が創造性を自由に発揮できる社会を実現すること」をミッションとして事業を展開してきました。中でもペンタブレットや液晶ペンタブレットの分野では、リーディングブランドとして、国内外のクリエイターから高い支持と信頼を得ています。
近年は、デジタルクリエイティブ市場そのものが大きく変化しています。プロフェッショナルだけでなく、趣味で創作を楽しむ方やSNSで作品を発信する方、これから創作を始めたいという方まで、ユーザー層が大きく広がってきました。ワコムとしても、これまで培ってきたプロフェッショナル領域での強みを活かしながら、より幅広い方々が創作を始め、成長していく過程に寄り添うブランドとして、新たな価値を提供していきたいと考えています。(上田氏)
― 「ペンタブレットはワコム」という高いブランド力は、御社にとって大きな強みですね。
そうですね。液晶ペンタブレットをはじめとする当社製品は、多くの方々にご支持いただき、デザインやアニメーション、映像制作など、プロフェッショナルなクリエイションの現場でも広く採用されています。特に日本では、「デジタルクリエイションツールなら、まずワコムを検討しよう」とブランド名を挙げて選んでいただくケースも少なくありません。
一方、グローバルに見ると、「ワコム」というブランドが十分に浸透しているとはまだ言えないと感じています。製品を比較・検討する段階では候補に挙がっても、「ワコムだから選ぶ」というところまでは至っていないのです。(品玉氏)
そこで、私たちが所属するセントラルマーケティング部門では、グローバルにおいても「デジタルクリエイションといえばワコム」と想起していただけるブランドになることを目標に掲げています。その実現に向けて、国内外で一貫性のあるマーケティング戦略を構想・実践し、単に製品の販売促進にとどまらず、ブランド価値の向上やお客様との継続的な関係づくりにも取り組んでいます。
もちろん地域ごとの市場特性に合わせたローカライズも重要です。そのうえでグローバルでは、「製品を売る」ことだけを目的にするのではなく、「創作を始めるきっかけを提供する」「クリエイターの成長に寄り添う」という視点を大切にしていきたいと考えています。(上田氏)
全社で「同じ数字」を共有し、グローバルマーケティングにつなげる
― Webサイトの目的、役割をどのように位置づけていらっしゃいますか。
現在、ワコムでは目的や役割の異なる複数のWebサイトを運営しています。中でも個人のお客様や組織に属するユーザーとの接点となるサイトは9つになります。内訳は、5リージョンで展開するオンラインストアに加え、ブランドサイトとコミュニティサイトがそれぞれ国内外向けに用意されており、さらに多言語対応のために実際の見え方はもっと多くなります。
それぞれのサイトは連動しており、「コミュニティサイト」がメディアとして幅広い認知を獲得するとともに既存ユーザーとの関係を深め、「オンラインストア」で購入につなげ、「ブランドサイト」は製品情報を提供するとともに、BtoB領域ではリード獲得の接点としての役割も担っています。(品玉氏)

ブランドサイトについては国内外ともに私たちが所属するセントラルマーケティング部門が統括し、コミュニティサイトは各リージョンで管理しています。また、オンラインストアは各リージョンの主にセールス部門が運営していますが、これらのサイトから得られるデータはセントラルマーケティング部門でも集約・分析し、グローバルでの戦略立案や施策に活用しています。
たとえば、ユーザーがどのような経路でワコムや製品を知り、どのような情報に関心を持ち、最終的に購入や会員登録などのアクションにつながるのか。その一連の行動を把握することで、ユーザーへの理解を深めていくことができます。
また、地域やチャネルごとの成果を可視化し、施策の評価・改善につなげることも重要です。非常にベーシックなことではありますが、限られたリソースの中で、より効果的なマーケティング投資を行うためにも、GA4をはじめとするデータ基盤は重要な役割を担っています。(上田氏)
― 役割が異なるサイトをグローバルかつ多言語で展開しているとなると、データ活用にも難しさがありそうです。
まさにそこが、大きな課題でした。以前からGoogle Analytics(GA4)を導入し、積極的にアクセス解析に取り組んでいましたが、サイトごとに運営方法が異なるうえ、複数のマーケティング施策が並行して展開されるため、計測ルールやイベント設計などが十分に統一されず、指標の捉え方にもばらつきが生じていました。同じプラットフォームで同じ数字を見ているつもりでも、実際にはその数字が成り立つ前提がそろっていなかったのです。リージョンやサイトごとにデータ分析がサイロ化した状態では、どうしても部分最適にとどまります。レポートを並べても前提が違えば正確な比較が難しくなります。
さらに、セールスとマーケティングでは、データを見る時間軸や目的も異なります。リージョンのセールスでは、キャンペーンや一定期間の「売上」が重要なゴールになります。一方、マーケティングでは、将来を見据えたブランド価値や認知の向上も重要な目標です。だからこそ、データをグローバル全体のマーケティングに活かすためには、リージョンやサイトを横断した計測・分析環境の標準化が不可欠だと考えました。(上田氏)
加えて、GA4への移行によって計測設定やタグ管理が複雑になり、「正しいデータを継続的に取得できているか」という不安もありました。分析を始める前に、まずは各サイトのデータを共通の基準で捉えられる状態をつくり、データ品質を担保するための基盤を整える必要があったのです。
また、担当者によってGAに関する知識やスキルにも差があり、判断が個人の経験に左右されることも多く、「何が正しいのか」「誰の見方を基準にすればいいのか」がわかりにくい状態でした。(品玉氏)
もう一つ大きかったのが、分析結果を共有する環境です。現状でもグローバルで共有されているデータはありますが、セールス情報が中心で、ECのデータの反映にもばらつきがあり、最終的にはGAで個別に確認する必要がありました。計測や指標を標準化できれば、誰もが同じデータ、同じ基準で分析し、その結果や知見を正確に共有できるようになります。
そうなれば、グローバルで打ち出す戦略や施策についても、数字を根拠に理解が深まり、納得感をもって取り組めるようになる。全社が同じ方向を向いてマーケティングを推進するためにも、重要なことだと考えたのです。(上田氏)
❝その先❞の運用まで見据えて、長期的に伴走できるパートナーを選ぶ
― 課題解決に向けて、メディックスに相談されたご経緯や、ご依頼を決めた理由についてお聞かせください。
まずGA4やGTM環境の見直しから始めるにあたり、技術的な知見と実務経験を持つパートナーを探していました。そこでGoogleで「GA データ整理」と検索した際に見つけたのが、メディックスさんです。検索結果に出てきた数社と、以前から知っていた会社から資料を取り寄せ、比較検討したうえで面談に進みました。(上田氏)
当時は私自身、GA4の経験がまだ浅く、用語や仕組みについて十分に理解できていませんでした。計測基盤の整理・最適化といっても、具体的に何から始め、どう進めればいいのか、明確なイメージを持てていなかったのです。
そうした状況を理解したうえで、メディックスさんは専門用語を使わず、非常にわかりやすく説明してくださいました。ヒアリングもとても丁寧で、こちらがわからないことを前提に話を進めてくださったので、安心して相談することができました。疑問点も一つひとつフォローしていただき、短期間で必要な知識をキャッチアップできたと思います。
もう一つ直感的に「いいな」と思ったのが、ダッシュボードの見やすさです。他社の提案とも比較しましたが、メディックスさんのダッシュボードは単にデータを可視化するだけでなく、「実務で使うこと」まで考えて設計されていると感じました。「このダッシュボードを使って仕事をしたい」と思えたことも、ご依頼を決める大きなきっかけとなりました。(品玉氏)
やはり、「使える」ことが大事ですよね。実は過去にも分析環境の整備に取り組んだことがあったのですが、運用の難しさから定着せず、途中で頓挫してしまった経験があります。だからこそ今回は、導入時だけではなく、実際に継続して使えることを重視していました。
そして、私としては、単なる設定作業ではなく、将来的な運用も見据えて、計測基盤を整理・最適化していただけることを期待していました。その点、メディックスさんとは技術的な話だけでなく、私たちが抱えるビジネス上の課題や、データをマーケティングにどう活かしていくかというところまで踏み込んで話すことができました。そこに、これまでの豊富な支援経験を感じましたね。単なるツール導入や設定支援ではなく、導入後の定着や活用まで一緒に考えていただける。長期的なパートナーとして信頼できると感じたことが、最終的な決め手となりました。(上田氏)
部門やリージョンを越えて、「データでつながるマーケティング」への布石に
― メディックスによるサポートでは、具体的にどのようなことを実施されたのでしょうか。また、どのような成果がありましたか。
複数サイトの関係性を整理したうえで、GA4のプロパティ構成の見直しや統合を進めていただきました。加えて、Cookieコンセントツールの影響によって一部のデータが取得できなくなっていた問題への対応など、GA4やGTMを含む計測環境全体を幅広く調整・整備していただいています。その結果、データ取得の信頼性が大きく向上し、レポートや分析結果に対する安心感も高まりました。
正直なところ、説明を受ければ「なるほど、そういうことだったのか」と理解できるのですが、そもそも何が問題なのか、そして「あるべき状態」にするためには何をどう直せばよいのかは、私たちだけでは判断できなかったと思います。計測環境が整理され、共通の指標でデータを見られるようになったことで、さまざまな場面で同じ前提に立って議論できるようになりました。それが結果として、データに基づく意思決定のスピードや精度の向上にもつながっています。(上田氏)
ダッシュボードも最初に感じた通り、とても使いやすくて快適です。以前は上層部に「全体として今どうなっているのか」を説明できる統合的なレポート環境がなかったのですが、ダッシュボードの導入によって、必要な情報をスピーディにまとめられるようになりました。日常的な分析やレポート作成はもちろん、会議中に突然「こういうデータはある?」と聞かれた時にも、その場ですぐに分析結果や根拠となるデータを画面上で示せます。その場で判断いただけることも増え、さまざまな業務がスムーズに進むようになりました。(品玉氏)
上層部への報告だけでなく、セールスやマーケティングに関連する部門同士でデータを共有し、活用しやすい環境が整ったことも大きな成果です。そうした流れを加速するため、関連部門の担当者を集め、メディックスさんにGA4やダッシュボード活用についての講習会を実施していただきました。参加者からは「実務での展開イメージが湧いた」「チーム内でのコミュニケーションにも役に立ちそう」といった声があり、満足度の高い内容になりました。一方で「PDCAの具体例を知りたい」「さらに高度な分析を学びたい」という要望も出ており、今後の開催も検討しています。
「データを共通言語として、国内外が全社一丸となってブランド価値向上に取り組む」という理想には、まだ道半ばです。ただ、まずはセールスやマーケティングに関わる一人ひとりが自身の業務とデータがつながっていることを意識し、日々の施策に活かしていくことが重要だと考えています。(上田氏)
Webサイトのデータ活用が容易にできるようになったことで、自分の❝立ち位置❞が明確になり、マーケティングを見る視野そのものが広がったと感じています。以前はどうしても担当領域や、手元で取得できるデータだけを見て判断しがちでしたが、「全体の中で自分たちは何をすべきなのか」「その施策にはどのような意味があるのか」と、より広い視点で捉えられるようになり、SNSなど他の動きまで踏まえて考えるようになってきました。(品玉氏)
「整える」から「活かす」へ。データドリブンなグローバルマーケティングを加速
― データ活用基盤が整備されたことで、今後はどのように活かしていきたいとお考えですか。
現在、日本以外のマーケティングやセールス施策については、各リージョンの判断に委ねている部分が多くあります。ただ、今後グローバル全体でデータを分析し、リージョン間で比較できるようになれば、それぞれの強みや課題もより明確になってくるでしょう。各リージョンが同じ指標、同じデータを見られるようになれば、セントラルマーケティングから施策や改善案を提案する際にも、客観的な根拠を示しやすくなります。データをもとに共通認識を醸成できれば、先ほどお話ししたような、グローバルで一貫したブランドメッセージやマーケティング施策にもつなげていけるでしょう。この領域はまだこれからですが、ぜひ取り組んでいきたいと思っています。
また、今後はWebサイトのデータだけでなく、広告やキャンペーン、外部ECなどのデータも統合し、より広い視点で分析できる環境を整えていきたいと考えています。その一環として、2026年8月より、広告タグ・GTMを含めたタグ運用のヘルプデスク支援をメディックスさんに依頼しました。各施策の成果を個別に見るだけでなく、全体で何が有効なのかを把握し、セントラルマーケティングからの提案やブランド価値向上につなげていきたいと考えています。(上田氏)
― メディックスに対する期待や要望などがあればお聞かせください。
今回メディックスさんのご支援によって、マーケティングにおけるデータ活用が一段階進んだことを実感しています。それは、計測環境を整備する技術力や使いやすいダッシュボードだけでなく、当初から丁寧に説明し、理解度に合わせて対応してくださった人的なサポートがあったからと言えるでしょう。
今後、たとえばダッシュボードの使い方などについて英語でも同様のサポートが受けられれば、海外リージョンでも理解が進んで、データに対する共通認識をさらに広げていけるのではないでしょうか。現在、指標の定義などを英語で一覧化していただく予定なので、まずはそれを各リージョンに共有していきたいと考えています。(品玉氏)
私たちにとって計測環境の整備は重要な第一歩でしたが、今後は取得したデータを活用し、いっそうの事業成長につなげるフェーズに入ると考えています。分析や可視化だけでなく、マーケティング施策の改善提案やインサイト抽出など、より活用領域に踏み込んだご支援にも期待しています。また、プライバシー規制や計測環境の変化が続く中で、最新動向に関する知見も引き続きご提供いただきながら、長期的に伴走していただければと考えています。(上田氏)
株式会社ワコム
事業内容:ペンタブレット・液晶ペンタブレットの開発・製造、デジタルインク技術、ソフトウェアサービス
設立:1983年7月
https://www.wacom.com/